自衛隊にも軍法会議を認めよ。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 






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草莽崛起:皇国ノ興廃此ノ一戦在リ各員一層奮励努力セヨ。大日本帝国憲法復活! 


2012.08.21(火¥山下 輝男:プロフィール






1 はじめに

 何を今さら、前近代的な忌まわしいものを持ち出すのかとお叱りを受けることを承知で今までタブー視されてきた軍刑法(軍法会議)について述べたい。

 古来、武力組織の規律と秩序を維持するために、極めて厳しい軍律が要求されてきたことは歴史的事実であり、今日でも軍刑法(軍法会議)を司法制度の中に位置づけている国がほとんどである。“軍法会議なき武力組織は軍隊とは言えない”とも言われるゆえんである。

 自衛隊は、国際法上は軍隊と見なされたとしても、国内法上は明確に国防軍(自衛軍)と位置付けられているわけではない。従って、特別の司法制度としての軍刑法や軍法会議が認められていないのだとも言える。

 しかしながら、自衛隊を取り巻く諸情勢は激変した。存在するだけで良しとされた時代から、有事に機能し、国際貢献等の海外任務を適切に果たすことが求められる時代に突入した。

 このような新時代に対応した軍刑法や軍法会議は如何にあるべきか、あるいはそもそも必要なのか等について愚見を述べたい。もとより法律の専門家ではないので、雑駁な論理展開になるかもしれない。諸氏の御叱正・御指導を賜れば幸甚である。


2 存在する自衛隊から行動して評価される自衛隊への変革

 


我が国は、1992(平成4)年6月、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(いわゆるPKO協力法)を制定し、同年のカンボジア暫定機構(UNTAC)への陸上自衛隊の派遣を皮切りに、モザンビーク、ルワンダ等々12件のPKO派遣、5件の「人道的な国際救援活動への協力」および8件の「国際的な選挙監視活動への協力」を行ってきた。

 また国際緊急援助隊法(JDR法)に基づき、被災国や国際機関の要請に基づき国際緊急援助活動を行ってきた。

 さらには、イラク特措法やテロ特措法、新テロ特措法に基づく人道復興支援等の活動をも行ってきた。

 また、ソマリア沖やアデン湾での海賊行為から付近を航行する船舶を護衛する為に、当初は海上警備行動により、海賊対処法が成立後はそれに基づき水上部隊及び航空部隊を派遣している。

 また、長年、タブーとされてきた有事法制についても、北朝鮮の不審船事件、米国同時多発テロ事件の発生などにより俄に論議が深まり、平成15年から16年にかけて、小泉純一郎内閣の下で有事法制の基本的枠組みである武力攻撃事態法をはじめとする武力攻撃事態関連3法および関連7法が成立した。

 従前は、国内において災害派遣のみに従事して訓練のみをしておれば事足れりとされてきたが、国際任務の常態化があり、今なお冷戦構造を残す周辺情勢に真に対応し得ることが求められるようになった。すなわち、行動して評価される時代になったと自他共に認識するようになったのである。

 しかしながら、自衛隊の憲法上の明確な位置付けや集団的自衛権と共に置き去りにされたものが軍刑法に関する態勢整備である。


3 軍事組織における独自の司法制度について


(1)軍独自の司法制度の必要性 

 我が国においても、戦いには「戦目付」(合戦の状況を監察し、将士の勇怯・手柄の有無等を見届けて将に報告する役職)や「軍監」が配置されてきた。

 そもそも、軍隊は個人が組織の一員として有機的に機能することによって勝利を得るものであり、命令違反や怯懦な行為があれば全軍を危うくし、ひいては国家の命運をも左右する。

 そのため、近代の軍隊においても、軍紀の保持(厳正な規律と秩序の維持)が求められている。これを法律的な面から担保するために、軍隊の構成員の軍事関係やその他の犯罪を一般の司法制度とは別の法体系により処理する軍事司法制度が設けられた。

 軍刑法により違背行為などに対する処理方針を定め、軍法会議によって処断されることとされたのである。

 一般司法裁判とは別の司法体系を設ける理由は次のようなものであるとされる。

 軍事組織の特殊性や作戦行動への影響度を考慮した処罰を行う必要性が高く、一般市民に適用される法体系には馴染まない。

 また、軍隊や軍人の違法行為の処断は迅速に行う必要性が高く、これが遅れると軍紀保持が難しくなり、作戦行動に支障を及ぼすこともあり、部隊の指揮命令にも支障を来す可能性が高い。

 また軍事犯罪の事実関係の把握、犯罪の認定、量刑の決定には法律の他に軍事に関する知識が必要である。また軍隊は一般司法裁判所の管轄外である外国に駐留する可能性があることなどである。

(2)軍刑法及び軍法会議について

 軍事とは無関係な一般犯罪は、一般の司法裁判所の管轄となっており、軍刑法においては、先ず軍事犯罪を定め、それぞれに応ずる罰則を定めている。

 一般的な軍事犯罪には「反乱」「敵前逃亡(戦線離脱、利敵行為)」「脱走又は脱走未遂」「任務遂行中の睡眠又は飲酒」「上官殴打(暴行脅迫)」「武器又は弾薬の投棄」「敵との内通又は幇助」「辱職」「軍用物損壊」「椋奪」「違令」などである。

 作戦行動中における上記に列挙したような行動は部隊を危殆に陥れることは必定であり、厳罰をもって処断し抑止する態勢を取ることは当然であるとうなずけよう。

 軍事裁判所(軍法会議)には、常設および特設があり、旧陸軍においては、常設の高等軍法会議は陸軍大臣が、軍(師団)軍法会議は軍司令官(師団については師団長)が軍法会議長官となった。

 米軍では、3種類の軍法会議――高等軍法会議(招集者は師団長以上)、特別軍法会議(同旅団長以上で重罪でない犯罪)および簡易軍法会議(同大隊長以上で下士官の重罪でない犯罪)――がある。

 軍法会議の職員には、判士として法務官と軍人、検察官は法務官から任命、各種の弁護人の選任ができるなど、いろいろなバリエーションがある。

4 現行自衛隊及び自衛官に対する司法制度の現状と課題


(1)自衛隊員に対する現状

 自衛隊は、軍隊ではなく行政機関であり、自衛官やその他の防衛省職員は特別職の国家公務員とされている。従って、自衛官等の違法行為は刑事訴訟法による手続きに則って処理され、軍法会議で審理されることはない。

 自衛隊は軍隊ではないから軍法会議も設けられていないのだとは皮肉屋の言か!

 もちろん、自衛隊の任務の特殊性を考慮して、一般の国家公務員よりは厳しい罰則規定が設けられている。自衛官には、自衛隊法に基づく懲戒処分のほかに、自衛隊法第9章の罰則に基づく刑罰がある。

 防衛出動や治安出動時における違法行為、防衛秘密漏洩、武器弾薬等の損壊などについて規定されている。

 例えば、防衛出動時においては、「敵前逃亡(職務離脱)」「命令拒否・不服従」「部隊不法指揮」等の場合には7年以下の懲役または禁錮に処することとされている。

(2)問題点

●一般の国家公務員に比較すれば厳しいかもしれないが、諸外国の例に比すればその量刑は軽いのではないだろうか?

 戦死(この語彙は死語? 戦いの最中に命を落とすことは覚悟すべきことである)するよりは、不名誉であっても高々懲役7年であれば、それに服するのが、まだましだと考える者はいないと保証できるか?

 このようなことでは軍事組織としての軍紀は保持できない。

●また、自衛隊法第123条に規定されている罪状が全てを網羅しているのかどうかについても検討を要しよう。諸外国の例や旧軍の例を見ても自衛隊法に規定されている罪状の範囲は狭いと思わざるを得ない。

●裁判の迅速性、海外派遣時の裁判のありよう、法曹関係者の軍事に関する知見などに関する問題点ついては既に述べた通りである。

 これらを総括すると自衛隊には自衛隊独自の司法制度を設ける必要性があると筆者は愚考するが、次項に述べるような根強い批判があることも事実である。


5 独自の司法制度を設けること等に関する批判


(1)特別裁判所は憲法違反である。

 憲法第76条2項において「特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行うことができない」と規定されている。

 一般司法裁判所とは独立した旧憲法の軍法会議や行政裁判所等の特別裁判所を設置することができないとされているのである。例外は裁判官弾劾裁判所や国会議員の資格争訟裁判のみである。

 憲法を不磨の大典として改正を許さないのであれば、この批判は妥当であるが、軍法会議・軍事裁判所が国家として是非とも必要であれば憲法を改正すればいいはずだ。

 また、この規定は、最終審は一般司法裁判所に委ねるとしても前審としての軍事裁判所は認められると解釈することも可能である。最高裁判所の下級審としての軍事裁判所の設置は、家庭裁判所と同じく設置可能であろう。

(2)軍法会議は身内、高級将校に甘くなりがちで、隠蔽の恐れがある等の根強い批判がある。

 我が国の戦前の例や諸外国の例に即して批判されるが、そのような懸念もしかもありなんではあろう。しかしながら、そのような欠点は運用によって克服できるはずだ。角を矯めて牛を殺すことがあってはならない。

 前審としての軍事裁判制度では、最終審は最高裁判所で審理されることになり、公平性が保証される筈だ。また、軍法会議の審理方法にも透明性を持たせ、判士の選任に工夫を凝らせばよいのではないかと愚考する。

(3)自衛隊の士気は高く、部隊長の指揮統率及び統御も適切であり、必要性は少ない。

 確かに現在の自衛隊の士気は高く、規律違反も非常に少なく列国の軍隊に比すればその規律厳正さは群を抜いていよう。しかしながら、防衛出動時などにおいて危険を顧みずと宣誓していたとしても、怯懦な行為や利敵行為が起きないという保証はない。

 そのような行為が万一起きた場合の影響度~全軍が危険に陥るなど~を考慮すればその抑止策としての厳しい軍律は必要だ。

(4)刑罰のみ厳しくするのは、著しく公平性を欠き、自衛官に相応の名誉と処遇を与えてこそバランスが取れる。

 このような批判には諸手を挙げて賛意を表したい。全く同意だ。自衛隊が創設されて間もなく60年、この間任務は拡大し、果たすべき役割も大きくなり、大災害への期待度もさらに大きくなっている。

 周辺情勢は益々きな臭くなっている。まさに自衛隊の真価が問われる時代に突入している。しかしながら、防衛予算も人員も削減され、日々の隊務運営にも支障を来しつつあり、何よりも憲法上の位置づけがいまだ解決されていない。

 命を賭して国家の防衛に任ずる者に対する相応の名誉・誇りと処遇が為されているとは言い難い。軍法会議の制定と同時に自衛隊・自衛官に対するあるべき体制整備を切に願うものである。

(5)独自の審判所的なものを設ければ事足りうるのではないか?

 公正取引委員会やその他の行政機関が裁判所の審理前に審理を行うことは認められており、このようなシステムを自衛隊や自衛官の犯罪に関しても採用すること可能であるはずだ。

 例えば、海難審判法に基づいて海難審判所が行う海難審判があるが、これは原因究明を行うことが目的であり、刑事裁判ではなく、最終的な法的拘束力は基本的にはないので、軍刑法の趣旨とするところとは異なる。


6 各種憲法改正案における軍刑法(軍法会議)の取り扱いについて

 

憲法改正に関する議論において、軍刑法(軍法会議)に関する見解は分裂している。

 平成6年に読売新聞が発表した憲法草案では、現行憲法と同じく、「特例の裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行うことができない」としている。ほかの各種の憲法試案や草案も概ねこの延長線上にある。

 自主憲法制定を党是とする自民党は、本件に関して、平成17年当時は、軍事に関する裁判を行うため、法律に定めるところにより下級裁判所として軍事裁判所を設置すると明確化していた。

 しかしながら、平成24年4月の憲法改正草案では、第9条第5項において、「国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない」と規定し、根強い批判に配慮したのか、平成17年の案からやや緩和(後退?)した規定となっている。

 軍刑法及び軍法会議に係る議論は、以上の3案を軸にして議論されることになるのだろうが、平成24年版の自民党案はいかにも姑息である。正々堂々と正面から議論すべきではないのか。


7 おわりに

 

 軍法会議と言うと忌まわしいイメージが付きまとい、正面から議論されることが少なかったように思う。時代は変わったのだから、タブーに挑戦すべきだろう。

 もとより、軍刑法・軍法会議を発動する必要もないほどの軍紀厳正な自衛隊(新国防軍)を創設すべきであり、各級指揮官はそれこそ血の滲むような努力を続けていることを信じて疑わない。

 そして、自衛隊・自衛官に名誉とそれに相応しい処遇を与えて、彼らが誇りを持って任務に邁進することができるようにすることが政治の役割であり、そうすることにより、軍刑法(軍法会議)を必要としない武力組織を創設できる。