【産経抄】8月13日 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 










お盆休みの真っ最中、おじいちゃんとおばあちゃんの歓待に、子供たちが上げる歓声が聞こえてくるようだ。13歳の横田めぐみさんはどんな夏休みを過ごしたのだろう。

 ▼昭和52(1977)年10月、新潟空港で祖父を見送る笑顔の写真が残っているだけだ。めぐみさんのお嫁入りの際にプレゼントしようと、父親の滋さんが13年間撮影してきた最後の一枚でもある。北朝鮮の工作員に拉致される、わずか1カ月前だった。

 ▼昨年末に発足した北朝鮮の金正恩政権は、盛んにイメージチェンジを演出している。家族を公にしなかった父親と違い、公式の場には夫人を同伴するのが金第1書記のスタイルだ。平壌の遊園地の完工式では、絶叫マシンに乗って笑顔を浮かべる写真まで公開した。

 ▼しかし本質的には、何も変わっていない。今年6月、大阪府警に詐欺容疑で逮捕された男は、北朝鮮の対外工作機関の指令を受けていた疑いが強まっている。いまなお日本は、北の工作員の天国らしい。

 ▼北朝鮮は一方で、日本人戦没者の遺骨返還や慰霊のための訪朝を認める代わりに、人道支援を引きだそうと外交工作を続けている。ただし、拉致問題は解決済みとの立場は鮮明にしたままだ。北朝鮮の「拉致外し」戦略を決して許してはならない。

 ▼きょうまで日本橋高島屋で開かれている、めぐみさんの写真展には、母親の早紀江さんが夏祭り用に縫った浴衣など、思い出の品々も展示されている。そのなかで、小学5年生のめぐみさんが年末に参加した自然教室から家族にあてた、一足早い年賀状が目に留まった。「もうすぐかえるよ!! まっててね」。めぐみさんは35年間、同じ言葉を心の中で叫び続けてきたに違いない。