日本を守りたい日本人の反撃。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 









【書評】

『日本を守りたい日本人の反撃』田母神俊雄、一色正春著





■日本人の勇気と決意を問う

 良心のかけらをすら持たぬ者などいない。しかし、良心に沿って生きていくことは容易ではない。とりわけ組織人として生きている者は、自らの良心を裏切らざるを得ない局面は日常茶飯事だ。

 事実、日本人は組織を重んじる「礼」と正義を果たさんとする「義」の相克の中で悩み続けてきたのであり、その歴史を経て我々(われわれ)日本人は日本人となった。しかし現代日本人はそうした悩みをあらかた忘れつつある。上司に楯(たて)突く熱血会社員も天下国家のために自組織と戦い続ける官僚も、身の危険も顧みずに義を追求し続ける学者も、現代においてはまさに絶滅しかけているやに見えてくる。

 そんな閉塞(へいそく)した平成日本でも義に棹(さお)さす漢は絶滅してはいない-当たり前の事実を明らかにしてくれたのが本書だ。本書は、大東亜戦争についての政府見解に疑義を呈した論文を公表したことで航空幕僚長の任を解かれた田母神(たもがみ)俊雄氏と、尖閣事件映像が隠蔽(いんぺい)されていた中で当該映像をネット上に公開したために海上保安庁からの退官に追い込まれた一色正春氏との対談である。

田母神氏も一色氏も各々(おのおの)の立場における礼を重んじながらも、自らが信ずる義に従って振る舞い、結果、組織を辞することとなった。例えば、中国政府が尖閣事件について日本側の非を責め続けていたにも拘(かか)わらず、中国側の非をあからさまに記録した映像を「日本政府」が隠蔽し続けていた頃、一色氏は「見て見ぬふりをしていては、日本が大変なことになってしまう…誰もやらないのであるなら自分でやるしかない」と決意し、仕事を失うことを前提に動画を公開したと言う。

 果たして、自身は一色氏のように振る舞い得るのか-この問いに対して強く肯定できる程にその者の将来は明るく、そう答える者が多い程に日本の未来も明るい。だからこそ筆者は、一人でも多くの日本人が本書を手にとり、それを通して-筆者も含めて-礼と義の相克の現場に赴かんとする勇気と決意を改めて固められんことを、心から祈念したいのである。(産経新聞出版・1365円)

                        評・藤井聡(京都大学大学院教授)



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