水産日本の将来がかかる。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 









【主張】漁業の復興





東日本大震災からの復興には、漁業の再生が欠かせない。被災地の基幹産業であるだけでなく、日本の水産業の将来がかかっている。

 震災から間もなく1年になる。漁港などの再建はある程度進んだが、かつての賑(にぎ)わいを浜が取り戻すには、漁業者の意欲をかきたてる国民挙げてのきめ細かな支援が不可欠だ。

 被害が大きかった太平洋に面する北海道から千葉県までの7道県の漁業生産量は、合わせると全国の6割近くを占める。なかでも三陸沖は世界の三大漁場とされ、日本の沿岸漁業を支えてきた。

 それが、この震災で岩手、宮城、福島の3県を中心に約2万5千隻の漁船が失われ、300以上の漁港が被災した。全壊した市場は20以上にも及び、被害総額は1兆2千億円を超えた。

 それでも、この1年で港の補修や船の手当てなどインフラ面での再建には一定の見通しがついてきた。港湾の瓦礫(がれき)撤去などが急ピッチで進んだことが大きい。

 だが、漁業の復旧・復興は、それだけでは進まない。いくら魚を取っても、それを加工、冷凍・冷蔵して流通させる関連産業が立ち上がらなければ、水産業は本格的に動き出せないからだ。

 被災地の水産加工会社には、再建に強い意欲を持ちながら、震災前の債務が新規融資の足かせになって、再開に踏み切れないところも少なくない。

復興対策の補正予算には、こうした二重ローン対策も盛り込まれているが、煩雑な手続きが事業の再開を妨げているという。国は地元の事情に詳しい地方自治体や地域の金融機関に協力を求め、せっかくの施策が生きるような環境整備にもっと力を注ぐべきだ。

 漁業者側も柔軟さが求められている。それは急速に進む漁村の高齢化対策ともなる。漁協は民間企業に漁業権を開放する特区に反対しているが、資金や人材を呼び込む手法として、もっと活用してもいいのではないか。

 食生活の変化による日本人の魚食離れを、原発事故による風評被害が加速していることは見過ごせない。流通前の厳密な放射能検査にもかかわらず、仲買業者が取引を拒むケースもあるという。

 逆境にめげず、再起を期そうとする漁業者の思いを、こうした根拠に乏しい理由で萎えさせることがあってはなるまい。