日米豪EUで宇宙行動規範 宇宙ゴミ対策で協調
中国の宇宙活動牽制も
日本、米国、オーストラリアと欧州連合(EU)は、宇宙開発・利用に関する多国間の協力枠組みとなる「宇宙活動の国際行動規範」の年内策定に向け動き出した。人工衛星の運用に大きな脅威となっている「宇宙ゴミ」(スペースデブリ)発生を制限する国際ルールづくりに主眼を置く。その裏には、宇宙開発に力を入れ、衛星破壊実験などを繰り返す中国を牽(けん)制(せい)する狙いもある。
行動規範の策定作業はEUが主導しており、7、8両日には事務レベルによる初会合をウィーンで開いた。すでに草案も策定しており、宇宙ゴミ対策として人工衛星破壊の自制や、人工衛星への衝突回避に向けた通報制度の確立、被害国の協議申し入れなどが盛り込まれた。「宇宙ゴミの清掃責任」の定義化も検討課題とすることが決まった。
宇宙ゴミとは、運用を終えた人工衛星やロケットの部品・破片など。宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、10センチ以上の宇宙ゴミが約1万6千個確認され、小さいゴミを含めると数十万個に上るという。これらが秒速7~8キロの猛スピードで地球を周回しており、10センチほどの破片1個が衝突しただけで宇宙船が完全に破壊されるという。
宇宙ゴミのリスクは年々高まっており、昨年6月には日本人宇宙飛行士、古川聡さんが滞在する国際宇宙ステーション(ISS)に宇宙ゴミが接近し、乗員6人が脱出用宇宙船に避難する事態も起きた。
米国やEUなどが対策を急ぐのは、2007年1月に中国が衛星破壊実験を行い、約3千個の宇宙ゴミを発生させたことも大きい。
中国の宇宙活動は軍事的な色合いが強いだけに問題は深刻だ。米国議会諮問機関「米中経済安保調査委員会」は、昨年11月の11年度の年次報告で「中国が米国の軍事関連衛星をミサイル攻撃する戦略を進めている」と指摘、中国の衛星破壊実験はこの一環だったと断じた。クリントン米国務長官も1月、行動規範策定作業参加に際し「宇宙環境は宇宙ゴミや無責任な者の行為により重大な危険にさらされている」との声明で暗に中国を非難した。
ただ、行動規範に実効性を持たせるには、中国の参加が不可欠だ。このためEUや日米豪は、中国に行動規範策定作業への参加を呼びかけているが、参加すれば一定の情報開示が求められることもあり、中国は慎重な姿勢を崩していない。