【主張】母子殺害に死刑
平成11年に山口県光市で起きた母子殺害事件で殺人や強姦致死罪などに問われた大月孝行被告の上告審判決で、最高裁は被告の上告を棄却した。事件以来13年ぶりに死刑が確定する。
被告は犯行時に18歳と1カ月の少年だったが、最高裁は犯行を「冷酷、残虐で非人間的行為」と断じた。何の落ち度もない幸せな母子の生命を奪った責任の重さ、遺族感情や国民感情に照らしても他に選択肢のない妥当な判断だといえる。
少年法は18歳未満への死刑を禁じている。公判の最大の焦点は、1カ月の差で死刑を選択できるか否かにあった。18歳が最高刑を受容できる年齢と認定された以上、20歳未満を「少年」とする現行少年法のありかたについても、広く検討すべきではないか。
被害者の遺族として妻と娘の遺影を胸に判決を聞いた本村洋さんは判決後、「18歳でも反省しなければ死刑にされる。反省した状態で刑を堂々と全うしてほしい」と語った。極めて重い言葉だ。
被告は23歳の母親を絞殺後に乱暴し、生後11カ月の長女も殺害した。1審山口地裁は無期懲役を言い渡し、2審広島高裁は検察側の控訴を棄却した。これに対し、最高裁は「年齢は死刑回避の決定的事情とまではいえない」として審理を高裁に差し戻し、差し戻し控訴審は死刑を選択した。
被告側の主張は差し戻し審で一変し、当初は認めていた殺意と強姦目的を否定して傷害致死罪の適用を求めた。「乱暴したのは生き返りの儀式」などと、到底受け入れがたい主張も展開した。
こうした弁明に対し、最高裁が「被告は殺意や犯行態様について不合理な弁解を述べ、真摯(しんし)な反省はうかがえない」と断じたのは当然ともいえよう。
少年法は、12年に行われた改正で検察官に送致できる年齢を「16歳以上」から「14歳以上」へ引き下げた。19年には「14歳以上」だった少年院送致の対象年齢を「おおむね12歳以上」と改正した。
23年の警察白書によると、少年犯罪の検挙件数は減少傾向にあるが、一方で少年による重大事件も頻発しているのが現実だ。
犯罪を防ぐ抑止力としての期待が厳罰化の流れを後押ししているといえる。法の規定が時代の変化に追いついているかどうか、判決を機にさらなる検討が必要だ。