陛下の冠動脈検査、無事終了。
天皇陛下は11日、東京都文京区の東京大学医学部付属病院で、心臓の筋肉に酸素や栄養を送る冠動脈の内部の状態を検査された。宮内庁によると、検査は無事終了した。
陛下は午前9時すぎ、スーツ姿でお付き添いの皇后さまと病院に入り、居合わせた人たちに手を振られた。経過観察のため1泊し、12日に退院される。13日午後には、皇后さまと東京・上野の博物館を訪問される予定が宮内庁から発表されている。
宮内庁によると、検査ではカテーテル(細い管)を使い、体内の状態を見やすくする「造影剤」を入れて冠動脈を映し出した。
陛下は激しい運動をすると血液の流れが悪くなる「心虚血状態」になるとして、昨年も同じ日程で同様の検査を受けられた。その結果、血管の一部が狭くなっていることが分かったが、当面手術などの必要はないとして薬物治療を続けられていた。だが、治療を始めて以降も、ある程度の運動をすると同様の反応が若干みられることが心電図で分かり、再び検査をされることになった。
陛下 ご運動「慎重に」祭祀短縮 宮内庁判断へ
天皇陛下が心臓の冠動脈の検査を受けられたのは、昨年に続いて2回目となる。定期的な投薬治療にもかかわらず、同様の症状がなおもみられることが明らかになったことで、陛下の健康管理上、「心臓」が継続的な問題になる懸念が強まっている。
平成15年に前立腺がんを手術して以降、陛下は再発を防ぐため、がん細胞を増殖させることがある男性ホルモンを抑制するホルモン療法を行われてきた。さらに、この療法の副作用である「骨密度の低下による骨粗鬆(こつそしょう)症」予防のため、テニスなどの運動を意識して行われていた。だが、「今後は、時間や内容を一層慎重に考えて運動を行う必要がある」と宮内庁幹部は話す。
昨年2月の検査以降、すでにその動きは出ている。宮内庁によると、陛下は早朝に御所の近くを、日曜日の朝には一般に開放される時間帯前の皇居・東御苑を散策されていた。さらに、週末や休日にはテニスなどの運動もされていたが、心臓に急激な負担をかけないことも勘案し、散策の時間帯をずらしたり、テニスを控えたりされているという。
宮中祭祀(さいし)についても同様だ。陛下は昨年11月23日の新嘗祭を気管支肺炎により欠席されたが、その前には「冠動脈の状況をみると、長時間お祀(まつ)りを行うことにはさまざまなリスクがある」とする医師の判断で、皇居・宮中三殿に付属する神嘉殿へのお出ましの時間の短縮が決定されていた。
また、元日早朝に神嘉殿で行われていた「四方拝」も、今年はお住まいの御所に場所が移された。こうした変更を常態化させるかどうか、宮内庁は今回の検査結果を踏まえて決めることになる。
一方、ホルモン療法自体が血管が狭くなっていることに影響している可能性については、昨年の検査後の会見で、医師団が「無関係」とする見解を示している。