野田佳彦首相の施政方針演説に対する、代表質問は見ものだった。
わが自民党の谷垣禎一総裁は、前回衆院選における野田首相の演説画像がネット上などで問題になっていることを受け、「首相は街頭演説で『マニフェストに書いていないことはやらないのがルールだ』と述べている」といい、消費税増税のマニフェスト違反を追及した。野田首相はこう答弁した。
「民主党が前回衆院選で約束したのは『衆院議員の任期中に消費税を引き上げない』ということだ。政府・与党案は第1弾の引き上げを2014年に予定しており、現在の衆院議員の任期終了後だ。公約違反ではない」
明らかな詭弁と言うしかない。野田首相が消費税増税に覚悟を決めたのであれば、思い切ってマニフェスト違反を国民に謝罪し、撤回すべきだ。首相の答弁は、政治家への国民の信頼を失墜させるものだ。
こうしたなか、大阪市の橋下徹市長率いる「大阪維新の会」への注目が高まっている。最近、私に対しても「橋下氏の教育改革についてどう思うか?」と意見を求められることが多い。私は「その意気はよし!」と評価している。
政府が答弁書で指摘したように、教育目標の設定は、地方教育行政法上、一部を除いて教育委員会の職務権限に属する。問題は、新しい教育基本法にのっとった教育を行うにあたって、教育委員会が正しく機能せず、指導力を発揮していないことにある。
古い教育基本法には、前文や目的に「個人の尊厳」「人格の完成」はあったが、安倍政権時代に改正した新しい教育基本法では、前文に「公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成」と記し、目的に「国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」と書き加えた。
つまり、日本の伝統と文化を基盤として、国際社会を生きる日本人を育てようということだ。
そして、教育の目標として「豊かな情操と道徳心を培う」や「公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養う」「伝統と文化の尊重・それらをはぐくんできたわが国と郷土を愛する」と記した。
この基本法がある限り、子供たちの思い出となる入学式や卒業式で、教師らが君が代や日の丸に反対して、起立拒否などの行動を起こすことはあり得ないはずだ。
橋下市長は2月定例市議会に、君が代斉唱の際に起立しないなど、同一職務命令に3回違反した教職員を免職処分とする教育基本条例案を提出するという。私も3回違反が続けば、懲戒対象にしてもいいと思う。
ところが、最高裁は先日、卒業式などで国旗掲揚、国歌斉唱の際に起立しなかったため東京都教育委員会から戒告、停職の懲戒処分を受けた教職員らが、都に処分の取り消しなどを求めた訴訟で「戒告処分までは基本的に懲戒権者の裁量の範囲」との判断を示した。正直、この判断はおかしいと思う。
民主党政権下では、仕分けで道徳の教材予算が削られる状況にある。「大学の9月入学」といった、安倍政権下で進めた改革が実現に近づく一方、義務教育での改革は後退している。
(自民党衆院議員)