【from Editor】在日韓国人の「選挙」に議論を。
今年から在日韓国人に「選挙権が与えられる」ようになった-と書くと、本紙の読者は、目を剥(む)いて驚かれるかもしれない。ホントの話である。正確にいうと、2009年の韓国・公選法の改正によって、外国で永住権を持つ19歳以上の韓国民にも国政選挙の選挙権が与えられることになった(在外選挙制度)。その最初の対象選挙が4月に行われる国会議員選挙(総選挙)というわけだ。12月に行われる大統領選挙も、もちろんこの対象になる。
さて、「一生に一度ぐらい『選挙』なるものをやってみたい」と待ち焦がれていた在日韓国人の方々は、さぞかし大いに盛り上がっているのか、と思いきや、そうでもないらしい。
現在、外国人登録を行っている韓国・朝鮮(北朝鮮ではない)籍者は、特別永住者(終戦までに日本に住んでいた人とその子孫)の約40万人を含めて約57万人いる。このうち韓国籍は約45万人。さらに条件である「パスポートを持つ19歳以上」となると約21万人。決して小さい数ではない。
ところがだ。投票にはまず日本にある領事館で選挙人登録を行わなければならないのだが、1月下旬までの登録者数は1万人あまりにとどまっている。2月11日の登録締め切りまでにはもっと増えるだろうが、意外な低調ぶりではないか。
実は、この制度には別の懸念があると聞いていた。在日コリアンには過去約10年間で「朝鮮籍」→「韓国籍」に切り替えた人が約5万人いる。「朝鮮籍=北朝鮮」ではないのだが、北にシンパシーを感じている人が多いのも事実だ。一方で朝鮮籍では海外旅行や日本での生活が何かと不便なので、「政治的信条はそのままにして」国籍だけを変えるという人も少なくない。こういう人たちが“北朝鮮寄りの候補者”にこぞって投票したら…。平たく言えばこういう懸念であったが、前述の状況を見れば杞憂(きゆう)に終わりそうだ。
そんなことより、日本人としては「別の懸念」がある。一部民主党議員らが熱心な定住外国人への地方参政権付与が万が一実現すれば、在日韓国人は「国政選挙権は韓国、地方選挙権は日本」ということになってしまう。
「日本人も同じ条件だよ」という横やりが入りそうだが、基本的な条件・状況はまるで違う。ぜひ日本人がこの問題に関心を持ち、本紙オピニオン面などで議論を起こしてもらいたいと思っている。
(文化部編集委員 喜多由浩)