それをなぜ私に聞く? | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 






【赤字のお仕事】

http://sankei.jp.msn.com/life/news/120121/art12012118010003-n2.htm





校閲という仕事は、基本的に原稿をチェックし誤字脱字、事実関係の誤りを修正する、ということです。新聞の場合は、原稿のほかに紙面のかたちになってからも見出しやレイアウトのルールなどについてもチェックします。

 

原稿を書く記者も、もちろん完全な(誤りのない)原稿を書きたいわけです。書いた後で誤りを指摘されると怒る人もいますね、プライドの問題でしょうけど。というわけで、原稿を書いている途中で校閲に問い合わせ、というケースがちょくちょくあります。

 


たとえば

 

問「ヒトゴミの中ではマスクを、というときのヒトゴミはどの字を使うの」

 

答「新常用漢字でサンズイのコンの字にコムの読みが使えるようになったので、混雑のコンです」

 

問「会社をタテナオスのタテはどっち?」

 

答「建物をタテナオスなら建築のケン、経営をタテナオスなら起立のリツです」

 


といった文字の扱い、これは校閲の本来業務です。

 

問「TPPの日本語名はなんだっけ」

 

答「環太平洋戦略的経済連携協定です」

 

などの用語もルールが定まっていればお答えします。


しかし、稀ですがとんでもない質問もあります。

 

問「よく道路工事なんかで舗装を切り取る回転のこぎりみたいな奴、あれなんて名前ですか」

 

答「…。折り返し連絡します」

 

校閲の部屋には、辞書や図鑑、年鑑などそれなりにレファレンス用の資料はありますが、このご時世ですからネットで検索することの方が多いんです。キーボードを叩きながらボヤキもでます。『自分で調べりゃいいのに…』

 

結局、アスファルトカッター、コンクリートカッター、ロードカッターなどの名前で販売されていることは分かりましたが、責任をもって答えるには、これらが商標登録されていない一般名詞であるかどうか、特許庁のページに当たらなければなりません。回答できたのは20分後でした。

 

尋ねられれば誠実に調べて答えますが、校閲はなんでも電話相談室でも落語に出てくる物知りのご隠居さんでもないんだよ、と言いたくなるケースでした。(シ)





 【赤字のお仕事】 


産経新聞社の校閲記者が、日ごろの編集業務で体験した興味深いエピソードや豆知識を綴ったリレーエッセーです。