第二次大戦後の英国は坂道を転げ落ちるように没落したが、それは七つに海に広がった広大な植民地を失ったことだけが理由じゃない。左翼の労働党政権が「揺り篭から墓場まで」と呼ばれる行き過ぎた福祉政策を採り、主要産業を国営化して市場競争を否定し、経済の根幹を破壊したからに他ならない。
同じ労働党でも、今の労働党とは体質が違う。かっての労働党は、裏ではソ連と繋がっていると噂された真性の社会主義政党だった。たぶん本気で国家破壊を企んだのだろう。英国 が如何に悪辣な植民地政策を行ってきたか、自虐史観まで教育に取り入れて子供達から愛国心を奪い、虎視眈々と革命の土壌作りに励んでいた。
経済が悪化して貧しくなり、人々からプライドが失われれば、社会全体に暗鬱なムードが漂って当たり前だ。70年代の英国は、まさにかの地の空模様のようにどんよりと薄暗く停滞していた。英国 人と云えば無気力の塊だったし、経済は英国 病と嘲笑われるに相応しい状態だった。
それを一変させたのが、サッチャーさんだ。79年に彼女が率いる保守党が大勝して政権奪還を果たすや、それまでの暗鬱なムードを吹き飛ばした。太陽と青空が戻った印象だった。首相就任と共に、小さな政府による市場経済重視と国防強化をぶち上げた。国民には頑張った者が報われる社会を約束して自助努力を促し、人々のプライドまでしっかり回復させた。
現在のわが国を英国 になぞらえることが客観的に正しいかどうかよく分からない。しかしかっての繁栄の時代を過ぎた日本が、革命を標榜する社会主義者の政権によって、徹底的に苛められ、覇気を失っているのは確かだ。社会全体を暗鬱な空気が包む。でも英国 が79年を境に劇的に変身したように、わが国だって、きっとまた強い日本に戻れる。しっかりした政党が政権を担い、傑出したリーダーが国を率いるなら、立派に回復して再び成長の道を辿れる。
次の首相と呼ぶには、まだ稲田さんはお若いかも知れないし、先ずは閣僚としてのご経験が必要かも知れない。しかし彼女のひと言、ひと言の鋭さには強いリーダーシップを感じさせる何かがある。稲田さんは日本のサッチャーになれる人ではないかと期待してしまう。
ちなみにサッチャー党首率いる保守党が大勝したときですら、女性に首相なんぞ務まるかと外野がうるさかった。今と違って会員制のクラブやバーには女性が入れない時代だったこともあるが、国家の命運は男が酒を片手にひっそりと語るものだ、サッチャーみたいな口うるさいホステスは必要ない、なんて声すら聞いた。オンナに大局的な判断が出来るものかなんて、平気で女性を蔑視する英国 紳士(?)ばかりだったのだ。
でも気がつけば、英国 病を退治して国を復活させたのはサッチャーさんだった。進退窮まったときに火事場の馬鹿力を発揮するのは常に女性だ。女性のパワーを甘く見ちゃいけないのだ。
頑張れ、稲サッチャー!