【主張】国旗国歌判決
最高裁で学校行事での国旗国歌をめぐる3件の判決が下された。国歌斉唱の際、起立しなかった教師に対する東京都の処分を不当とした2審判決を破棄するなど、大筋で妥当な判断である。しかし一方で、停職や減給を行き過ぎとした一部判断には疑問が残る。
3判決では、国旗国歌への指導や教師への職務命令について昨年5月以降の最高裁判決を踏襲し、改めて合憲と判断した。そのうえで懲戒処分のうち最も軽い「戒告」に問題はなく、昨年3月、教職員約170人への戒告処分の取り消しを命じた2審・東京高裁判決を破棄し、処分を有効とした。当然である。
ところが戒告よりも重い「停職」や「減給」などについては裁量権の逸脱を一部認め、処分の取り消しを命じた。国旗の引き下ろしやゼッケンの着用、文書配布といった積極的な妨害や抗議行動などがない場合、停職や減給処分まで科すのは違法という判断だ。教育委員会に抑制的で慎重な対応を求めたといえる。
だが、停職処分が取り消された教師は過去2年間で3回、不起立により処分を受けている。積極的な妨害はしていないといっても、校長による再三の指導や処分にも一向に耳を貸さず改めなかった。判決がこうした実態を踏まえなかった点は残念だ。
指導を無視し続けた結果、処分が重くなっていったのは当然である。そもそも卒業式など厳粛な式典の雰囲気を壊し、児童生徒に及ぼす悪影響を考えると、停職1カ月の処分はむしろ妥当で、「公務員は身分が守られ過ぎている」と感じる国民は多いだろう。
大阪府では再三の職務命令にも従わない教職員について、処分を明確にする条例が検討されている。処分に高いハードルを課す今回の最高裁判決によって、条例化の作業自体が停滞する恐れもある。さらに各地の教育委員会が処分をためらい、見て見ぬふりをしている教育界の悪弊が一層強まることも危惧される。
国旗や国歌を大切にするのは国民の素養だ。子供たちにも、きちんと教えなければならない。ところが学校では、長年にわたって国旗や国歌を政治闘争や裁判闘争の道具とする教師勢力がおり、さまざまな弊害がもたらされてきた。教育委員会には、さらなる毅然(きぜん)とした対応を求めたい。