【主張】 年金一元化
“公務員天国”をいつまで許すつもりなのか。民主党が会社員の厚生年金との一元化にあたり、公務員共済年金の上乗せ給付制度である「職域加算」を温存しようとしていることだ。
特権を残したままでは制度の完全統合にはならない。改革の意味そのものを失うことになり、国民の理解はとても得られまい。
「職域加算」とは、年金給付額に月額約2万円を上積みする共済独自の仕組みだ。「追加費用」と呼ばれる税の投入や、遺族年金の受給権が父母や孫らにも引き継がれる「転給制度」とともに公務員特権の象徴とされてきた。一元化は、これらの優遇策を含めた年金の官民格差解消が目的だ。
ところが、民主党は社会保障と税の一体改革の素案に、「民間の退職金との比較を行う人事院の調査の結果を踏まえる」との文言を書き入れる方向だ。職域加算を「退職金の一部を分割して受け取る企業年金のようなもの」と位置づける官側の言い分をそのまま受け入れたにすぎない。
民主党を支持する自治労や日教組への配慮から、一体改革の法案内容を骨抜きにしようとする意図は明白だ。
そもそも民主党の年金改革議論は生煮えの部分が多すぎる。とりわけ一元化は、十分な検討がなされてきたとは言い難い。
自公政権時代に国会提出された年金一元化法案では、厚生、共済両年金制度の差異は厚生年金にそろえることにより解消することになっていた。惰性で続いてきた特権はただちに廃止すべきだ。
先の臨時国会で民主党は、国家公務員の給与を平均7・8%削減する法案を先送りしたばかりだ。最大の支援団体である連合などの意向をくんで人事院勧告の見送りにこだわった結果である。
「国家公務員の総人件費2割削減」というマニフェスト(政権公約)もいまだ実行に移されていない。「労組依存」が過ぎて、政策が次々とねじ曲げられている。
野田佳彦政権は東日本大震災の復興財源のために所得税などの増税を強行し、消費税増税にも意欲を示している。国民に痛みを求める以上、行政の無駄の徹底排除とスリム化は不可欠である。
国会議員の定数削減を含め、政治家や公務員が率先して身を切る姿勢を示すことなしに、国民に負担を強いることはできない。