APEC で野田は確かにTPP交渉参加を表明した。それまで国内の議論で必ずしも賛成論が勝っていたわけじゃない。むしろ反対論に理があった。それでも首相の決断だと大見得をきった筈だ。だからこそオバマ大統領 は歓迎の意を表し、キッシンジャー氏は英断だと褒め称えた。国際社会も日米を基軸にした経済共同体がとうとう発足かと囃し立てた。
ところが帰国した途端、野田は「交渉に参加するとは云ってない」「何が何でも入るわけじゃない」などと発言している。閣内の鹿野農水省までが「交渉参加を前提にしていない」との理解を口にして、野田を援護する。おいおい、それじゃあの交渉参加表明は一体、何だったのだ。首相の決断はどこに行った!?
ホノルルの日米首脳会談直後、ホワイトハウスが発表した野田首相の発言を外務省 が大慌てで否定したのもヘンな話だ。首相と大統領が話し会う以上、非公式な秘密会談でもない限り、お互いの言葉は事前に協議を重ねた公式見解でしかない。両政府が合意事項を公にするセレモニーだ。それを事後に云った、云わないなんておかしい。
察するに野田は「全ての品目を自由化交渉の対象に上げる」とコメントしながら、帰国する段になって、あの言葉はちょっと刺激的過ぎたかなと思い直し、外務省 を通じてアメリカ 側に訂正を申し入れたのだ。もちろん相手は取り合わない。野田も最終的に訂正を求めないと明言した。当たり前だ。出来るか、そんなもの!
これこそ典型的な二枚舌外交だ。国内には白と云い、国外には黒と云う。あちらとこちらで主張する見解や方針が全く違う。殆ど詐欺のレベルだ。国際社会から見れば、日本の真意がさっぱり分からないし、作為的な欺瞞や悪意すら感じるだろう。鳩山や菅と似たような行動だ。
もちろん交渉事は当事者同士が一生懸命努力しても決裂することは多々ある。でもはじめから、その気がないと白状するくらいなら、交渉自体に参加しなければいい。逆に参加すると表明した以上は、他国と誠実に協議し、認め合い譲り合いながら、妥結に向け努力して当然だと思う。
平気で二枚舌を操る野田は何を考えているのか。アメリカ はじめ関係諸国で無用の反日感情をかき立て、わが国の国際的な信用度を失墜させようと云うのか。何故かTPPアメリカ 陰謀説が跋扈する今、国内で反米感情を煽って、支那の喜ぶ日米離反工作を進めるつもりか。いかにも民主党 らしい悪巧みだ。