マット安川 中国取材から戻られた宮崎正弘さんがゲスト。下落の一途を辿る不動産の実態や、共産党幹部への爆発寸前の不満、サイバー攻撃の問題などについて、最新情報を伺いました。
箱物だけのゴーストタウン続々。中国バブル崩壊は近い
宮崎 正弘(みやざき・まさひろ)氏評論家、作家。国際政治・経済の舞台裏を解析する論評やルポルタージュを執筆。中国ウォッチャーとしての著作の他、三島由紀夫を論じた著書もある。近著に『中国が日本人の財産を奪いつくす! 』(徳間書店)『自壊する中国 ネット革命の連鎖 』(文芸社)『震災大不況で日本に何が起こるのか 』(徳間書店)『オレ様国家 中国の常識 』(新潮社)など。(撮影:前田せいめい、以下同)
中国に九江という所があります。三国志の時代から戦略拠点と言われてきた古い街ですが、ここでものすごい開発をやってるんです。何でも、現在の人口150万人を500万人に増やす計画だとか。
マンション、学校、病院、スタジアム、保育園など、とにかくやたらと造っています。しかしマンション団地に行ってみたら、ほとんど人が住んでいないんです。いったいだれに売ったんだと聞いたら、まずはデベロッパーに売り、デベロッパーは投資家に売った、と。
温州の投機集団はこういうのをばんばん買うんですよ。日本のお台場あたりのマンションもずいぶん買ってます。いずれにしても彼らにとっては儲けのタネでしかなく、住む気などまったくない。ゴーストタウンになること必至です。
500万都市にするとなれば、大前提として雇用が必要でしょう。しかしここにはそれがない。企業を誘致しようにも交通インフラが不十分ですし、優秀なエンジニアを輩出するような大学もほとんどありません。
そもそもプロジェクトに整合性というものがない。後のことを考えずに箱物だけ造るんですから、恐れを知らないと言うしかないですね。似たようなケースはほかにも少なくありません。
中国経済のバブルは間もなく破裂します。すでに上海のど真ん中で不動産が値崩れしている。日本の新聞は書いていませんが、売れ残った物件が4割引きで売られて、割引き前に買った人が抗議集会を開いたりしています。
これは駐在員の友人たちの話ですが、家賃を大幅に割り引かなければ出ていくと言うと、家主は折れるっていうんです。開発の最中でまだ値上がりしている内陸の都市にも、こうした動きはいずれ波及するでしょう。
幹部も海外に逃げる共産党に民衆は怨念を温めている

中国人は政府に対する怨念、あるいは内向的復讐心とでも言うものを溜め込んでいます。
目下、最大の不満はインフレです。物価がどんどん上がって生活が脅かされている。規制が多すぎることもそうですが、元を辿れば共産党の権力があまりにも鉄壁で頑丈だから、民衆は我慢を強いられざるをえないんです。
共産党の幹部は、自分たちの子どもも財産も海外に逃がしています。公表されている数字では、逃げた幹部は4000人、持ち出した金は1000億ドルということになっていますが、実際には約4万4000人が逃げ、おそらく3000億ドルくらい持ち出しています。
どうやって海外に金を送るかといえば、インチキなインボイスとか契約書とかでごまかす。中国じゃそんなこと、へっちゃらなんです。
そういう連中が権力を行使して、乱開発をしている。あげく一生懸命働いた金でやっと家を買った人を、そこは道路にするからと立ち退かせたりしています。中国では年間12万件くらい暴動が起きていますが、原因はそういうことです。
次のリーダーになると言われている習近平は、家族も親戚もみんな外国籍を持っています。本来の中国共産党ならこういう人間は吊るし上げに合うんですが、そうはならない。なぜならみんなやっていることだからです。
中国の民衆はそれを知っています。だから彼らが愛国心だのなんだのと言っても、ちゃんちゃらおかしいということになる。溜まりに溜まった復讐心は、いずれどこかで爆発するでしょう。
サイバー攻撃対策が急務。攻撃能力も必要である
衆議院のサーバーがサイバー攻撃を受けました。ほかにも日本の防衛産業のトップである三菱重工、IHIなどもやられています。アメリカの議会報告では完全に中国の仕業だと、名指ししています。
しかし日本はといえば、せいぜい警視庁のリポートに「中国らしい」と書いてあるくらいで、抗議する気配もありません。尖閣問題についても日本は正式に抗議したことがない。あれだけわが海域に入ってきたんですから、普通の国なら大使召還の事態ですよ。
サイバー攻撃について、私はもう10年以上前から警告を発しています。防衛省のシンクタンクも同様の提案をしている。しかし防衛省に本格的なハッカー防御部隊は、今もありません。警視庁にも警察庁にもない。これは大々的に予算をつけてやらないといけないことです。
日本は専守防衛の国だからと攻撃兵器を持たず、同様にサイバー攻撃の能力もありません。これだけの被害を受けているんですから、この分野の防衛力をもっと強化すると同時に、他国のネットワークをずたずたにできるような攻撃力を持っておく必要があります。
国会でそういう議論が起きない、そういうことに考えすら及ばないのは、嘆かわしいかぎりです。
アメリカの「特許トラップ」に日本人は怒るべし!

知的所有権の問題についても、日本はもっと怒らないといけません。例の高速鉄道などは象徴的ですが、中国は日本の技術をずいぶん盗んでいる。
アメリカにもさんざんやられています。あそこはトラップの国ですから、特許についても罠をかけるんですね。
日本人が発明した製品がアメリカでぼんぼん売れたころ、やおら本当の発明者は自分だと名乗り出てきたりする。サブマリン特許と言うんですが、日本企業はこれのせいで数百億円単位の損失を被っています。
日本の特許制度では、申請後18カ月たったらその内容が自動的に公開されます。公開されたらその日のうちに中国語だろうとロシア語だろうと、翻訳して持ち帰ってもスパイ行為にはなりません。
ほかの国は秘密条項というものを作ってこれを防いでいるんですが、日本にはこれがない。戦前はあったんですけどね。
今の日本人は、自分の身を自分で守るということすら考えない。日本人としての気概を魂を、失っています。腑抜けのようなものです。
これを突き詰めれば、教育の問題に行き着きます。戦後の教育は知育、体育はともかく、徳育ということをまったくしていません。歴史教育の間違いも確かにありますが、今のような社会になってしまった根本的な原因は、道徳という人の基本をおろそかにしてきたことだと思います。
「マット安川のずばり勝負 」10月28日放送