中野剛志は「田所博士の役割」を演じた。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 





夕刻の備忘録 様のブログより。




通常は大島優子の仮面を被り、時に松田優作のように死ぬ。
京都大学の中野剛志は昨日、田所博士の役割を演じた。
八分の狂気と二分の理性が、視聴者を釘付けにした。

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小説、テレビ、映画と桁外れのヒットとなった「日本沈没」。主役は日本人全体といわれたこの作品の中で、鬼気迫る演技で圧倒的な説得力をみせたのが小林桂樹演じる「田所博士」である。

田所雄介:日本列島の沈没を予言し、自ら深海に潜ってその事実を確認し、そして一人でも多くの日本人を救おうと、必死で戦った天才科学者である。

田所が戦った相手は何か。
それは日々激しさを増す地震でも、襲い掛かる津波でもない。
世間の無理解である。御用学者の妨害である。

今、目の前に起こっていることを見ようともせず、うたかたの夢に酔い、不幸は全て他人のためにあるかの如く、虚飾の繁栄に流されている日本人に、博士の警告は届かなかった。金と地位のためだけに学問を利用する似非学者に、長期現象を読み取る技量は無く、特異現象に挑む精神力も無かった。

人一倍祖国日本を愛する田所。その彼が、愛する祖国・日本の最期を予期し、実証した最初の人間になった。それが彼には哀しかった。

時の政府によって密かに進められていく「日本人移住計画」。規模も複雑さも、個人の調査研究の枠を大幅に超えて、国家プロジェクトが次々に計画されていく中、研究者としての田所の役割は静かに終わろうとしていた。

しかし、未だ「そのこと」を大半の日本人は知らない。頻発する地震に際しても、根拠の無い楽観論に寄りかかり、自らの行く末さえ真剣に考える者は少なかった。

そんな中で、田所は最後の大勝負に出たのだ。

「日本列島に何が起こっているのか」というテレビの討論番組に出て、列島の沈没を絶叫し、反論する学者に殴り掛かったのである。全ては計算づくであった。自分自身を半狂乱の異常者に見せることで、群衆のパニックを和らげ、そして確実に話題になることで、多くの国民に危機意識を持たせようとした。異常な男、礼儀も何も弁えない男が、生放送で暴力事件を起こした。表面的にはそれだけのことであった。

しかし、田所は最後の勝負に勝った。中身の真偽はともかくとして、「そこに男の本気を感じ取った」視聴者が多く出たのである。近未来の日本に起こること、起こり得ることに最大限の注意を払おうという国民が増えたのである。

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昨日、お台場の某テレビ局の某番組で、屋内放送に関わらず司会者が常に帽子を被っている「あの番組」で、中野は田所の役割を演じた。

沈み行く日本を見ているのは、田所も中野も同じである。早い時期から問題に取組み、世間の無関心や、御用学者の妨害と戦ってきたことも、また同じである。

我々は田所と同じ、中野の哀しみを感じ取らねばならない。
彼は道化を演じながら泣いている。
日本の将来を憂いて泣いている。
全てが手遅れなのではないかと震え、己の無力さに絶望している。

大島優子も松田優作も、自分自身の絶望を覆い隠し、気力を奮い立たせるためのまさに「仮面」なのである。何処かにギャグでも入れないと、多勢に無勢のこの状況下で、辛くて苦しくてとても話す力が湧いて来ないのである。

そんな中で、最後の勝負に打って出た。
それが生放送での大芝居である。

もちろん、彼は本気である。本気で怒り、本気で訴え、そして僅かに残った理性で芝居を演じたのである。独特の臭覚で、スタジオ内の空気を読み切り、コーナー全体を完全に支配した。あれは冷静でなければ出来ない芸当である。本気で怒りながらも、決して理性を失わず、他の出演者をそして多くの視聴者をコントロール下に置いた。

何も分からない、何も知ろうとしない人は、彼の態度の意味が理解できないだろう。「定番の批判」でもして、悦に入っているのだろう。他人の哀しみの分からない人間には、何を言っても無駄だ。公憤を私憤から批判しても、それは全く無意味である。

中野の哀しみは、個人の哀しみではない。何時まで経っても目覚めようとしない、日本国民に向けられた哀しみである。その怒りは私憤ではない、国家の将来を憂う公憤である。この違いが見抜けない人に、何を語る資格があるというのだろうか。

十数分の出演場面を見て、本当に辛くなった。そして、心の中で手を合わせた。彼は、自身の評判や将来を一顧だにせず、国家のために道化となり、多くの国民の目覚めを促進させてくれたのである。


さあ続こう。

一人でも多くの人に、日本の現状を報せよう。
彼のこの献身を無駄にせぬために。
次は我々の出番だ。

書ける人は書こう。
動ける人は動こう。
話の好きな人は一人でも多くの人に話そう。

祖国日本は今、途方も無い危機にある。

天災で滅びる国はない。
国民の無関心こそが国家を滅ぼすのである。
日本が滅びて困るのは誰だ!
それは「あなた自身」ではないのか!