FX選定が本格化
航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)の導入数は約40機。総額数千億円の取引だけに商戦は過熱するばかり。最有力なのは米英などが共同開発中のF35ライトニング2だが、米海軍のFA18E/F、欧州共同開発で英独伊などが採用するユーロファイターも維持管理面などの優位性を売りに攻勢をかけている。政府はどこに主眼を置き、最終選定するのか。
(峯匡孝)
「基本的に性能というのが一番大事であることは間違いない…」
一川保夫防衛相は7日の記者会見で選定で「機体や武器の性能」を最重視する考えを表明した。中でももっとも重視されるのは敵のレーダーに探知されにくいステルス性能だ。
この点ではF35が大きくリードする。
「ステルス性は設計段階から組み込まなければ実現しない。FA18やユーロファイターなどに改良を加えたところで及ばない」
F35の開発主体、米ロッキード・マーチン社は、報道陣への説明会で、F35のステルス性能を誇示した。
中国でJ20(殲20)、ロシアでT50-とステルス性を持つ第5世代機の開発が進んでいるだけに空自に導入を求める声は強い。
ただ、選定では「維持管理を含む経費」「国内企業の参加形態」「納入後の支援態勢」の3点も考慮される。9月にF2戦闘機の最終号機が納入されて以降、国内の戦闘機の生産ラインは止まっており、国内の戦闘機生産・技術基盤の維持は大きな課題だ。
この点では9カ国の共同開発であるF35は不利となる。技術移転などの制約が多く日本の防衛産業にメリットが少ないからだ。
この「弱点」を突き、日本国内でのライセンス生産を大幅に認めることを「売り」としているのが、FA18の米ボーイングと、ユーロファイターの英BAEシステムズだ。
ボーイングは「7~8割を日本国内でライセンス生産可能」、BAEシステムズは「機材、エンジン、武器、センサーなどあらゆる技術に触れられる」とそれぞれ日本の防衛産業への貢献度を強調する。
また、F35が開発段階で日本が求める平成29年3月末までの完成機納入さえ不安視される中、FA18はすでに米海軍に配備され、ユーロファイターもリビア空爆に参加した実績を持つ。
こうした優位さを前面に出し、売り込み攻勢をかける2機種に対し、F35側も設計情報の開示制限を見直し、機体組み立てや構成品生産など一部国産化を認める方針に切り替えた。
元空将で軍事評論家の佐藤守氏は「政治的、商業的な動きに左右されず制服組の純軍事的判断が必要だ」と前置きした上でFXについてこう推測した。
「ステルス性ではF35は魅力的だ。納入が遅れても待てるならばF35。待てずに“つなぎ”で採用するならFA18ではないか…」
F35A戦闘機(米ロッキード・マーチン社提供・共同)
FA18スーパーホーネット
ユーロファイター