アメリカで「ウオール街を占拠せよ」デモが続いている。長引く不況や高止まりする失業率、広がる貧富の格差などへの不平不満を、ウオール街の金融街を牛耳る大企業にぶつけるこの運動、既にはじまって3週間くらいが経った。いつの間にか全米148都市にまで運動が広がり、海外にも飛び火している。
では全米でおおいに反ウオール街気運が盛り上がっているかと云えばそうでもない。仕事にあぶれた欲求不満の若者たちが無目的にどんちゃん騒ぎをしている感じが否めない。だから、一般市民は眉をひそめて見ているだけで、とても冷ややかだ。かなりの数の逮捕者が出たが、警察の横暴だとか過激な弾圧だとか、そんな声は一切聞かない。
そもそもウオール街が諸悪の根源と云っても、それ自体取ってつけたような無茶な主張だ。バブル を助長し崩壊させ庶民を苦しめたじゃないかと喚いたところで、空しい感情論に過ぎない。政府は金融機関を救済するな!税金を雇用創出に回せ!と云う意見も、ウオール街が破綻したら国民経済への打撃はもっと大きいと云われればそれっきりだ。右往左往してヒステリックに叫んでいるものの、主張がはっきりしない。さっぱり要領を得ない。目的が見えない。
それもそのはず。実はデモ参加者の殆どがリベラル派で、多くがオバマ支持者だ。共和党政権なら、もっと激しくはっきりと政府を攻撃していただろう。ところがチェーンジの掛け声に踊ってオバマ、オバマと熱狂し、政権発足に感涙を流 した人たちだから、民主党 政府を非難する気はない。仮に非難が高まると、オバマ政権続投の目を潰すことになってしまう。よっし、社会に鬱積する不満の矛先をどこに向けよう。そう思ってぐるりと見渡したら、ウオール街があった。そんな感じだ。
政権発足後、既に2年10ヵ月、オバマ政権は無能だと云う認識が広がっている。経済失政に加えて外交も冴えない。国力は低下し威信は傷つくばかり。保守層を中心に、もうこれ以上、オバマ大統領 に任せられないと云う声が巷で渦巻く。「ウオール街のバカヤロー」と叫んで騒ぐガキンチョたちは何も考えていないだろうが、裏で糸を引く連中は、オバマへの不満集中を避けようとデモを企画したに違いない。左巻きはずるい。