国としての義務忘れるな。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 







【主張】日本兵遺骨収集




フィリピンで収集した日本人戦没者の遺骨に旧日本兵以外の骨が混入していると指摘された問題で、厚生労働省が検証報告書を明らかにした。現地人の骨が交じった可能性を認め、民間との連携で進めてきたこれまでの事業を見直すという。

 収集時に日本人かどうかを判断するのは難しい作業だ。その精度を上げ、収集方法を改善するのに異論はない。しかし、「遺骨の発見状況の確認などが足りなかった」などと民間だけを批判して幕引きしたことには疑問がある。

 そもそも、遺骨収集は国家の責任として行うべき事業である。にもかかわらず、政府は十分に責務を果たしていない。だからこそ、NPO法人など民間が積極的に乗り出してきた。

 海外での日本人の戦没者は約240万人で、半分近い113万柱が未帰還のままだ。うち約59万柱は収集が可能とみられている。

 遺骨収集は厚労省の社会・援護局の担当だが、専門の遺骨鑑定機関もなく、スタッフは約30人しかいない。米国では、軍などに専門組織が置かれて調査を続け、「1体たりとも遺骨を国外に残さない」との強い姿勢で臨んでいる。雲泥の差ではないか。

 厚労省によれば、昭和32年度から遺骨収集事業を開始し、平成19年度までは厚労省の職員が収集に立ち会ってきた。21年度から東京都内のNPO法人に情報収集事業を委託し、19年度に161柱だった返還遺骨が21年度に7740柱と急増した。

 遅々として進まない状況を憂えて現地調査を繰り返した民間の取り組みは評価されるべきだが、厚労省の職員が立ち会っていれば、より正確な遺骨収集が行われたのではないか。

 戦後、陸軍省と海軍省が解体されたことにより、戦没者慰霊業務は旧厚生省の援護行政の一環として行われてきたが、最近は、遺骨収集事業への消極姿勢が目立つ。各地にある軍人墓地の維持管理も多くがボランティア任せになり、似たような問題が横たわる。

 厚労省は遺骨収集をめぐって民間の非を責めるのではなく、自らが責任をもって事業を指導すべきではないか。できれば、職員の立ち会いも復活させるべきだ。終戦から66年が経過し、戦没者への記憶が薄れる中で国家の果たすべき責務が問われている。