【主張】公務員宿舎凍結
批判が強まっていた埼玉県朝霞市の国家公務員宿舎建設について、野田佳彦首相が5年間の凍結を決めた。当然の措置だが、あまりにも遅きに失していないか。
政府は東日本大震災に伴う復興増税などで新たな負担を国民に強いようとしている。ならば、宿舎問題にとどまらず直ちに公務員人件費や国会議員定数削減などに着手する必要がある。政治家や公務員がまず自ら身を削る姿勢を見せなくてはなるまい。
3LDKで家賃4万~5万円などとされる朝霞の宿舎建設は、公務員の利便を図るため、建設費105億円をかけて行われる。その一方で、大震災で家族や家、職業を失った多くの被災者たちが深刻な窮状を訴えている。
首相は内閣の最大の使命について「復旧・復興の加速化」と述べている。だが、先の臨時国会では、建設計画について「特段、変更するつもりはない」と答弁していた。その後、与野党や国民の反発を受けてようやく方針転換したというのでは情けない。
3日の建設地視察後の安住淳財務相との協議では、東京都千代田、中央、港3区の宿舎の原則廃止・売却方針でも一致した。
危機管理用の宿舎は必要だが、各省庁でどれだけの戸数が要るのか十分に詰めるべきだ。家賃補助など、事業仕分けでも指摘された宿舎に代わる方式も再検討してほしい。財務省内に研究会を置いて見直すやり方では、手前みそにならないか。
議員歳費を毎月50万円削減する措置は9月末までの6カ月で打ち切られた。先の国会で一部の政党から延長法案が出されたのに、多くの政党や政治家が口をつぐんだ。これでは、公務員人件費の削減を断行するにも腰が引けよう。政党助成金も見直すべきだ。
定数削減では民主党が衆院80、参院40削減をマニフェスト(政権公約)に掲げ、自民党も国会議員総定数72減などを公約してきた。だが、具体的な法案化作業は先送りされてきた。
各党の利害が絡んで調整は簡単ではないが、それを理由に立法府が自らを律することができないというなら、被災者や国民の不信は増すばかりだ。民主、自民両党幹部は次期国会や来年の通常国会までに実現する考えを表明している。早急に与野党協議で具体案をまとめなくてはならない。