機密文書の保存は必要だ | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 








【主張】沖縄「密約」判決




昭和47年の沖縄返還をめぐり、日米両国が交わしたとされる密約文書の開示を元毎日新聞記者、西山太吉氏らが求めた情報公開訴訟で、東京高裁は文書が廃棄された可能性を指摘した上で、原告側の訴えを退けた。

 原告への国家賠償を認めた1審東京地裁の判決を取り消したが、原告の主張する密約の存在は明確に認めており、必ずしも原告側の逆転敗訴とはいえない。

 問題の密約は、米軍用地の原状回復補償費400万ドルを日本が肩代わりすることなどを約したものだ。民主党政権下で、外務省の有識者委員会が外務、財務両省を調べたものの発見できず、昨年3月の報告書で「広義の密約」に当たると結論づけた。

 高裁判決はこの調査を「網羅的で徹底したもの。信用性は高い」と評価し、「(平成13年の)情報公開法施行前に秘密裏に廃棄したり、国の保管から外したりした可能性は否定できない」とした。大筋で妥当な事実認定である。

 国の機密に関する文書の扱いは知る権利だけでなく、国益の問題も絡む。すぐに公開できないケースが少なくない。しかし、いずれは公開され、後世の歴史家らの研究に付されるべきものだ。それを廃棄するようなことがあったとすれば、許されない行為だ。

 特に、機密性の高い文書を多く扱う外務、防衛省などは、開示の是非という問題以前に、厳重な保管を徹底すべきである。

 原告の西山氏は毎日新聞政治部記者時代の昭和46年、この密約に絡む外務省の機密公電のコピーを入手した。それを生ニュースにせず、解説記事にした。その後、コピーを当時の社会党国会議員、横路孝弘氏(現衆院議長)に渡し、横路氏は47年3月の衆院予算委員会で、これを振りかざして当時の佐藤栄作内閣を追及した。

 このため、公電の出所が容易に判明し、情報源(外務省女性職員)を秘匿できなかった。報道する側の倫理が厳しく問われたことも忘れてはならない。

 民主党政権は自民党政権時代の密約を暴くことに熱心だが、自らは秘密主義といえ、全体主義も否めない。最近も、鉢呂吉雄経済産業相が「放射能」発言で辞任したことを機に、輿石東幹事長らが情報を統制しようとしている。野田佳彦政権こそ、国民の知る権利にきちんと答えるべきだ。