北方領土「ロシア領」と表記
「国際地理オリンピック」の募集ポスターで日本固有の領土である北方領土をロシア領と「誤記」した問題で、大会関係者は一様に「単純なミス」と強調したが、その背景に領土問題に対する意識の希薄さを指摘する声も上がった。
国際地理オリンピックは1996年から隔年で開催されている地理の国際競技。記憶力より思考力が問われる問題が中心で、出題も回答も英語のため、「高いレベルの学力が求められる」(関係者)。昨年台湾で開かれた前回大会には28の国と地域が参加した。
そんな地理専門の国際大会の募集ポスターでの北方領土などの誤記。大会実行委は中学や高校の地理教員、大学教授、文科省教育政策研究所の調査官ら68人で構成され、このうち10人以上がポスターの製作に携わったというが、この「重大なミス」に誰も気づくことはなかった。
実行委員長を務める筑波大大学院の井田仁康教授は「外国が作った地球儀だと思うが、注意が足りなかった」と釈明した。
地球儀関係の問題をめぐっては、平成20年に学習教材大手「学研」グループが国内向けに販売する地球儀で、中国政府から圧力を受け、台湾を単なる「台湾島」と表記していたことが発覚。同社は「不適切だった」として販売を中止したほか、玩具大手の「タカラトミー」も「台湾島」と表記していた地球儀の販売を中止する問題も起きた。
青山学院大の袴田茂樹教授(現代ロシア論)は誤記について、「教育現場でも領土など国家の基本的な問題への意識の希薄さが蔓延(まんえん)していることの表れではないか」と指摘している。