【日々是世界 国際情勢分析】
「野蛮なイルカ漁はやめよ」外国人活動家が要求
鯨類追い込み漁が9月に解禁された和歌山県太地町に今年も、外国人活動家が常駐し、漁を中止するよう地元の漁師に圧力を加えている。
昨年、イルカ漁を批判した映画「ザ・コーヴ」が米アカデミー賞を受賞して以来、のどかな港町は、イルカや鯨をめぐる国際的な論争の地になった。漁に批判的な立場を取る国の大手メディアが、活動家の言動を好意的に報じている状況にあり、太地町への風当たりは一向に収まる気配はない。
コーヴに主演したイルカ保護活動家、リック・オバリー氏は漁解禁日の1日、約20人の賛同者を引き連れて太地を訪問。台風の風雨が強まる中、イルカが捕殺される浜で祈りをささげるパフォーマンスを行った。オバリー氏のグループはその後、映画で得た豊富な資金力を元に活動家を常駐させ、現地の様子をネット上に報告し続けている。
米最高峰レベルの自動車レース、インディカー・シリーズにも出場歴のある米女性カーレーサーのレイラニ・マンターさんは環境保護に熱心なことで知られる。コーヴ鑑賞後、オバリー氏の活動に参加するようになり、9月初旬から約2週間、レースの合間をぬって現地を訪れ、監視役を担った。
14日付の米有力ニュースサイト、ハフィントン・ポストに、マンターさんの長文の太地滞在記が掲載された。
その中で、マンターさんは漁師たちを「イルカの狩人」、漁を「恐ろしい大量虐殺」と表現。毎朝5時に漁港で監視活動を始める一方で、地元の警察官から尾行を受け、「あなたは他の動物たちのためにも戦うのか」と質問されたエピソードを披露した。
マンターさんはその返答として、動物園や畜産場で飼われているサルやライオン、ブタなどの“不幸”を強調する動画を作り、「彼らを野生に解放せよ」というメッセージを添付したことを記した。
一方、昨年、米反捕鯨団体シー・シェパードの一員として、太地町や岩手県大槌町で妨害活動を行ったカナダ人活動家、タラ・ミレンさんの近況が8月23日付のカナダのニュースサイト、ポストメディア・ニュースで紹介された。ミレンさんは漁を妨害する意義を「多くの日本人を教育するため」と主張。イルカ漁を、奴隷制度や女性虐待などの野蛮で時代遅れな慣習に例え、「世界に漁の実態をさらす」ことでこの慣習を変えられると訴えた。
ミレンさんは「プロの常勤活動家になって太地に戻りたい」として、2万ドルを目標設定額に寄付金を募集。同サイトはミレンさんについて「イルカのために監視活動を続けようと寄付を集める女性」と好意的に取り上げた。
また、ニュージーランドの有力サイト、スタッフでも、太地滞在歴のある女性活動家が漁の中止に向け、署名活動を行っていることを伝えている。
今後、太地町には、日本人を含む複数の団体の活動家が大挙して訪問することも予想され、過激な行為で地元警察が立件に踏み出す可能性もある。