日の丸GPS  | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 








【主張】日の丸GPS 安全保障も視野に整備を




日本の宇宙開発をどう進めるかについて、政府の宇宙開発戦略本部・専門調査会の方針がまとまった。「準天頂衛星システム」への取り組み強化を最重要課題として位置づけている。

 財政難に加えて東日本大震災の痛手からの復旧復興に巨費の投入を求められる現状での戦略的選択だ。実利実用路線への絞り込みである。ぜひとも日本経済再生のための産業競争力の強化などにつないでもらいたい。

 日本の準天頂衛星は現在、1基が活動中だ。昨年9月に打ち上げられた「みちびき」である。日本からオーストラリアの上空を、大きな8の字を描いて飛ぶ。1日のかなりの時間、日本の真上にいるので準天頂衛星と呼ばれる。

 この衛星からの電波は、カーナビでおなじみのGPS(衛星利用測位システム)と同じように地上の位置の特定に使える。電波の死角もないうえに精度も高い。

 準天頂衛星の数を増やせば本格運用に発展する。4基で24時間切れ目のない利用が可能になり、7基にすれば米国のGPSに頼ることなく、東アジアからオセアニアをカバーする「日の丸」測位システムが出来上がる。

 用途は広い。津波や地殻変動の精密測定から災害時の安否確認、避難誘導などに役立つ。無人車両の運転もセンチ単位で制御できるので放射能の除染にも有用だ。知恵を絞れば、新たな使い道が広がる。新たな市場創出の可能性を秘めている。

 自前の準天頂衛星システムの完備は、日本の安全保障上も極めて大きな意味を持つ。ロシアや欧州も衛星測位システムを保有している。中国版GPS「北斗」は、アジア太平洋地域での運用開始が近い。日本が大きく出遅れて、近隣地域での衛星測位利用が中国仕様に席巻されるようなことがあると産業競争でも不利になり、国の生殺与奪権を握られかねない。

 ただし、1700億円(4基)から2600億円(7基)と高額なので、惑星探査衛星などの宇宙科学分野の研究開発が圧迫されるのではないか心配だ。宇宙科学はすぐには実用に結びつかないが、長期的発展の生命線である。

 準天頂衛星システムは、米国が運用するGPSを補完し得るので日米協力関係の深化に資する。野田佳彦・新政権にとって初の建設的な対米案件でもある。