衆参の役割分担明確化を。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 








【from Editor】




故竹下登元首相の政治団体代表を務めるなど「政界最後のフィクサー」とも呼ばれた故福本邦雄の証言録「表舞台 裏舞台」(講談社)。この中に自民党最大派閥だった「経世会」(旧竹下派)の分裂劇で、会長代行だった小沢一郎氏が、中立とみられていた同派参院議員の取り込みに失敗した理由に触れているくだりがある。

 「彼(小沢氏)には一つの思い上がりがあって、首相指名の権利を持つ衆議院で多数を制すれば、参議院はその意向に従うものだと思っていた」

 竹下元首相の意向を受け青木幹雄元官房長官が根回しした結果、参院議員の圧倒的多数が「反小沢」で固まった。小沢氏がいま、民主党で輿石東参院議員会長との関係に気をつかっているのは、経世会分裂時に参院を軽視した反省にたっているのだろう。党幹事長に就任した輿石氏が周辺に「幹事長になるのは青木さんら自民党も含めて参院の歴史にないんだぞ」と語ったのも、多くの参院議員が衆院に抱く複雑な感情を反映したものといえる。

 かつては「参院無用論」もあったが、参院は野田内閣に5人の閣僚を送り出している。国会審議でも自民党の西田昌司氏の疑惑追及など参院のほうが活気がある。民主党出身の西岡武夫参院議長は代表選出馬に意欲を示した。新憲法下では首相はすべて衆院議員であり、西岡氏が出馬したらおもしろい戦いになっていたと思う。

 そこで考えたいのが衆院と参院の役割である。衆院にあって参院にないのが解散だ。衆院で内閣不信任決議案が可決されれば内閣は総辞職か解散に追い込まれる。参院には問責決議案があるが、可決されても総辞職などの拘束力は直接的にはない。それでも橋本内閣や安倍内閣は参院選での敗北の責任を問われ、総辞職に追い込まれた。このことは最近の内閣が短命である一因となっている。

 参院を廃止すれば「ねじれ」もなくなり政策遂行も早くなると考えることもできる。参院は行政監視機能の強化など独自色を出そうとしているが、衆院落選組が増えるなど違いが見えにくくなった。一方で、参院の存在なしに鳩山、菅両政権を退陣に追い込むことはできなかったとの指摘もある。

 衆参ともに比例代表と選挙区の組み合わせという似たような選挙の仕組みを維持することがいいのか。選挙制度改革がこれから本格化するが、衆参の役割分担を考える時期に来ているのではないだろうか。


                              (副編集長 有元隆志)