折れぬ竹富町、違法状態 育鵬社教科書、2度拒否
県教委の指導も根拠なく。
沖縄県石垣市と与那国町、竹富町からなる「教科用図書八重山採択地区協議会」が選定した育鵬社の公民教科書を、竹富町教委のみが不採択とした問題が混迷を深めている。竹富町教委の2度にわたる“育鵬社拒否”のため、同地区は8月末の採択期限までに教科書を統一できない違法状態となった。識者からは、竹富町のみならず、法的根拠のない指導に踏み切った県教委の違法性も指摘する声が出ている。
選定前から八重山採択地区では、「日本教育再生機構」のメンバーらが執筆した育鵬社の採択反対運動が過熱していた。県教委も日程延期を求める中、3市町の教委代表者らでつくる協議会は8月23日、来春からの中学公民教科書に賛成多数で育鵬社を採択した。
教科書無償措置法は、採択地区内の教委で同一の教科書を採択するよう求める一方、地方教育行政法は、教科書採択の権限を市町村教委に与えている。
教科書採択に詳しい拓殖大学の藤岡信勝客員教授は「2つの法律の要請を満たすため、採択地区協議会の決定を市町村教委が追認するという形式が長年行われてきた。協議会の決定に最後まで従わなかった事例はない」と指摘する。
しかし竹富町教委は同協議会の決定に従わず、8月27日に育鵬社を不採択とし、東京書籍を採択した。
同協議会の規約では、協議会と教委の決定が異なる場合、3市町の教育長の役員会で再協議できる。
同協議会は県教委の指導を受け、再協議を8月31日に開催。しかし合意に至らず、石垣、与那国両市町の教育長による賛成多数で、竹富町教委に、協議会の決定通りに採択するよう要請したが、竹富町教委は9月2日、再び不採択とした。
藤岡教授は「再協議という規約上、竹富町は1回は拒否できるが、それ以上は無償措置法違反になる」と指摘。「マンション建て替えで少数反対派の居住者が、個人の財産権を根拠に拒否するのと同じ。全体の利益を守るためには多数派に従わなければならない」と解説する。
県教委の狩俣智義務教育課長は当初、「地方教育行政法より無償措置法が優先され、各教委は協議会の決定を踏まえて採択しなければならない」としていた。ところが県教委は竹富町教委の2度目の不採択後、3市町の教育委員長に打開策を検討するよう指導した。
藤岡教授は「法令に従って指導するのが行政。竹富町教委の違法性を指導せず、法的根拠もない教育委員長会を求めることは無償措置法を侵犯する」と批判。「文部科学省が県教委を指導すべきだ」とする。
3市町の教育委員長は、いずれも育鵬社反対とされ、同協議会関係者は「育鵬社以外の教科書を選ばせるためとしか思えない」と不信感を募らせる。
8日には、3市町の教育委員が参加する八重山教育委員協会の臨時総会が開かれる。教育委員長会の代わりとなりそうだが、何か決まるかは白紙の状態で、採択の行方は見えない。