【緯度経度】ソウル・黒田勝弘
韓国が官民挙げて執拗(しつよう)に「日本海」非難を続けている。国際的地名の「日本海(SEA OF JAPAN)」という名称が気に食わないといい、韓国が主張する「東海(EAST SEA)」に変えるべきだと内外でキャンペーンを展開しているのだ。
最近も米政府の地名委員会が、韓国の訴えにもかかわらず「“日本海”のままでかまわない」と決定したといって憤慨している。
一方では、にもかかわらず国際舞台でのこれまでの努力により、各国の地図や書物など「東海」を併記するところが増えていると成果を誇っている。
また韓国政府が支援し、アゴアシ付きで各国の学者を招いてやっている「東海地名と海の名称に関する国際セミナー」(東北アジア歴史財団・東海研究会共同主催)も今年は17回をかぞえ、カナダのバンクーバーで開催されたという。
韓国の動きで最近、注目されるのは、韓国政府が堂々と「(海の名称は竹島問題と同じく)過去の歴史とくに日本植民地の残滓(ざんし)を清算する作業の一環だ」(8月12日、金星煥外交通商相発言)と述べたことだ。
つまり「日本海」の名称は日本の朝鮮半島統治(1910~45年)の結果もたらされたものだから早く変えるべきだというのだ。
竹島の日本領有権は過去のいわゆる植民地支配とは関係ないというのが日本の立場だ。「日本海」の名称も日本が言い出したものではなく、19世紀以来、国際社会が命名したものだから日本の朝鮮半島支配の歴史とは関係ないというのが、国際的常識である。
韓国としては何でも過去の歴史にむすびつけ、日本を非難し国際世論を有利にしようとの作戦のようだ。
ところが韓国が主張する「東海」には韓国内でも異論が出ているのだ。自分たちだけの沿海概念にすぎない「東海」を国際名称にしろというのはどだい無理な話である。古地図でも「東海」はほとんどない。
古地図ではむしろ「朝鮮海」や「コリアの海」といった名称の方が多い。そこであらためて、韓国としては「東海」ではなく「韓国海」を主張すべきではないかというのだ。
「政府部内で論議」といった報道もある。
「やはり…」という感じだが、しかしこれでは国際社会は「あれだけ東海、東海といいながら、韓国はいったいどうしろというのか」といっそう首をかしげるだろう。
古地図には「韓国海」という漢字表記はない。あるのは「朝鮮海」なので北朝鮮は昔からこれを主張してきた(北朝鮮は現在は「朝鮮東海」としている)。しかし韓国は「朝鮮」が北朝鮮的なので「朝鮮海」を主張するのはやめ「東海」にした経緯がある。
新たな「韓国海」論は、西洋人の古地図などにある「コリア」を「韓国」と訳してのものだが、これでは北朝鮮は当然、承知しない。“歴史歪曲(わいきょく)”である「日本海」非難の前に、韓国内あるいは南北で意見を整理するのが先だろう。