【主張】超円高
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110804/fnc11080403020000-n1.htm
急激な円高が東日本大震災からの復旧・復興を目指す日本経済の腰を折りかねない。再生の牽引(けんいん)役となる電機や自動車など輸出企業の業績悪化は必至だ。政府が明確な対策を示さないことが危機に拍車をかけている。
政府・日銀は有効策を総動員するとともに、市場動向を注視し、適時の円売り・ドル買い介入で円高阻止の断固たる姿勢を打ち出さなければならない。
米国が債務不履行に陥る最悪の事態は、債務上限引き上げ法の成立により回避されたものの、債務削減の具体策はこれからで、米国債格下げや景気の先行きへの懸念は市場でくすぶり続けている。
欧州諸国の財政危機も一段と深刻化、ドル、ユーロ売りが強まっているのが円急騰の要因だ。円高圧力は当面続く可能性が高い。
マツダの尾崎清副社長が「勝てる方法があるなら教えてもらいたい」と訴えるように、今の超円高水準だと、企業の自助努力だけで対応するのは難しい。
野田佳彦財務相は「あらゆる所と話し合いを持っている」と、米欧との協議実施を強調した。単独では効果は薄い。協調介入を積極的に働きかける必要がある。
だが、それだけでは不十分だ。為替介入と同時に欠かせないのが金融緩和だ。この両輪によって円高阻止とデフレ脱却への強い意志を内外に鮮明にできるからだ。
日銀には追加の金融緩和策が求められる。昨秋の総合経済対策の中で40兆円の基金を設け、国債や社債の買い入れを行ってきた日銀は今回、この枠を広げ、市場への資金供給を増やすべきだ。円の資金量が増えることでドルに対する円の価値が相対的に下がり、円高を抑制する効果が期待できる。
4日からの日銀の金融政策決定会合では、実効ある金融緩和の具体策を打ち出してもらいたい。
短期の円高対策に加えて、企業活動を支援し雇用増につながる中長期の経済対策も必須である。政府は3日になってようやく「経済情勢に関する検討会合」を開き、菅直人首相が「日銀は金融面から下支えしてほしい」と注文するにとどまった。野田財務相は総合経済対策を検討する考えを示すが、実行できるかどうか疑問だ。
菅政権が現下の円高に打つべき手を打たなければ、日本経済はさらなる窮地に追い込まれる。無策はもう許されない。