短歌が結ぶ日台の絆。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 








【外信コラム】台湾有情

http://sankei.jp.msn.com/world/news/110729/chn11072903080000-n1.htm




 台北市に住む元公務員、林蘇綿さん(86)の趣味は短歌。日本統治の少年時代、公学校(小学校に相当)で進学を支援してくれた恩師、前田寛先生のすすめがきっかけだった。

 

 その前田先生は1988(昭和63)年、75歳で他界した。今年3月、東日本大震災のニュースを見た林さんは、先生の引き揚げ先、宮城県石巻市で暮らすはずの「師母」(恩師の夫人)の安否が気になったものの、連絡がつかない。

 

「石巻の大地震(ない)と津波独り居の卒寿の師母は如何にぞと聞く」

 

 心配の余り詠んだ一首は所属する「台湾歌壇」を通じ、台湾引き揚げ者などでつくる日本の財団法人台湾協会(東京)の5月会報紙の片隅に転載された。

 

「私は無事よ。林さんの短歌に励まされました」

 

 協会を通じて前田京子さん(90)から林さんにお礼があったのは6月初め。恩師他界後、二十数年ぶりの音信だった。津波で家財を失った京子さんは、避難所暮らしの後、同市内で借りたアパートで転送された会報紙から林さんの短歌を見つけた。

 

 林さんは、先週、内臓疾患の手術を受けて入院中だが「また日本に行きたい」と笑顔。今度は「師母」の方から「早く元気になって」と激励の便りが届いた。


                                     (吉村剛史)