【首相訪朝検討】
訪米、訪中に続き…すべては「延命」のために。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110726/plc11072601300000-n1.htm
菅直人首相が水面下で北朝鮮訪問を画策しているのは、地を這(は)うような低支持率を挽(ばん)回(かい)し、さらなる延命を図る目的がある。首相としては、8月中に金正日総書記との年内の会談実施を発表できれば、たとえ退陣の3条件に挙げた再生エネルギー特別措置法案などがすべてクリアされても、首脳会談を政権維持の口実にできるとみているようだ。首相の延命のために、国家主権も拉致被害者の人権も踏みにじられかねない。
すでに退陣表明しているにもかかわらず、首相は外交日程固めに余念がない。9月前半には訪米してオバマ大統領と会談し、同月21日からニューヨークで始まる国連総会への出席も検討。さらに、中国が辛(しん)亥(がい)革命100年の記念行事を予定する10月10日前後の訪中にも強い意欲を示す。
そこには、国内の退陣圧力を「外交上の約束」を盾に乗り切るという意図が透けてみえる。
また、北朝鮮訪問カードをちらつかせることで国民に拉致問題での前進の期待感を抱かせ、政権浮揚につなげる目的もある。
平成14年9月の小泉純一郎元首相の初訪朝は、同年1月の田中真紀子元外相の更迭以降下落し、3~4割にとどまっていた内閣支持率を大きく押し上げた。
このとき、北朝鮮側が日本に伝えた「5人生存8人死亡」という情報は不正確で不誠実な内容だったが、小泉氏の訪朝決断は高く評価された。「小泉氏を強く意識している」(周辺)という菅首相はこの政治手法に目を付けたとみられる。
ただ、北朝鮮が「死に体」の菅政権に手をさしのべるとすれば、相応の見返りを期待してのことだ。
実際、今回の交渉では北朝鮮側は拉致問題では色よい回答は示していないとされる。たとえ首相が訪朝を強行しても、日本側が外交的な「取られ損」に終わる可能性は高い。
小泉氏の初訪朝時には、当時の官邸、外務省幹部にも一部しか知らされないまま北朝鮮側に、国交正常化後に日本が実施する「1兆円」といわれる経済協力が提示されていた。北側はその後、拉致被害者の一部を日本に帰国させたのに約束の見返りは得ていないと日本側に不信感を募らせており、同じ金額では折り合おうとしないだろう。
また、北朝鮮が仮に数人程度の拉致被害者の帰国を約束しても、首相が「拉致問題は解決した」との言質を取られてしまえば、重大な主権侵害かつ人権侵害である拉致問題はそこで立ち往生してしまう。
さらに、これまで日本と協力し対北朝鮮包囲網を敷いてきた米国と韓国のはしごを外すことにもなりかねない。首相の延命欲のもたらす危険性は、もはや計り知れない。
(阿比留瑠比)