空母を建造すべきだ。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 








【笠原健の信州読解】

22DDHは計画を白紙撤回し、空母を建造すべきだ。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110723/plc11072307000008-n1.htm



いよいよ中国の空母がお目見えする。ウクライナから取得した未完成空母「ワリヤーグ」の改修を大連港で急いできた中国が8月1日にも初の空母となる「施琅」の試験航海を実施するのではないかとの情報が流れている。中国は「施琅」を練習用空母として運用するとの見方があるが、いずれは国産の新型空母を次々と建造して洋上に送り出してくるのは確実だ。中国の海軍力の脅威はより深刻度を増してわれわれ日本に迫ることになる。そこで提案したいのがヘリコプター搭載護衛艦「22DDH」の建造計画を白紙撤回し、日本も空母建造に乗り出すという構想だ。


「22DDH」で中国の空母に対抗できるか?


 「22DDH」は全通甲板を持つ「ひゅうが型」を大型に発展させた護衛艦で、「ひゅうが型」が全長197メートル、全幅33メートル、基準排水量13500トンなのに対して全長248メートル、全幅38メートル、基準排水量19500トンとなり、完成すれば海上自衛隊最大の護衛艦なる。ヘリの発着スポットは「ひゅうが型」より1カ所多い5カ所でヘリの搭載数は哨戒ヘリ7機と輸送・救難ヘリ2機の計9機の搭載が公表されている。

 防衛省は「22DDH」の必要性について、周辺国の潜水艦や水上艦艇の増強を受けて、より多数のヘリコプターの運用を可能にして対潜・対水上戦能力の向上を図るとともに国際平和協力活動、災害派遣、邦人輸送などで洋上拠点を確保する必要があるとしている。だが、中国の空母が洋上を航行するという事態を踏まえたときに「22DDH」で十分に対処できるのであろうか?

中国が「施琅」に改修した「ワリヤーグ」は全長305メートル、全幅73メートル、満載排水量67500トンで艦首に斜度14度のスキー・ジャンプ台を持ち、空母艦載機は自らの推進力を使ってこのスキー・ジャンプ台から離陸する。中国は艦上ジェット戦闘機として双発で最高速度マッハ2クラス、航続距離3700キロの殲15の開発を進めている。


中国が空母機動部隊の運用は時間の問題


 さらに中国は「施琅」とは別に2015年までに通常動力の空母2隻、2015~2020年までに原子力空母2隻を建造する予定で、すでに上海の江南造船所で新型空母の建造に着手しているという情報もある。いずれ中国海軍はこれら空母を護衛する攻撃型原潜や随伴するミサイル駆逐艦や補給艦の建造を進めて空母機動部隊の運用を始めるだろう。

 中国海軍の空母機動部隊が東シナ海や西太平洋を遊弋するとき尖閣諸島や南西諸島などの防衛、それにシーレーン防衛に大きな脅威となるのは間違いなく、固定翼機を運用できない「22DDH」では中国海軍の空母に対抗するすべはない。

 中国が米海軍の空母に対抗する手段として対艦弾道ミサイルを増強して「空母キラー」にしようとしているように日本も中国海軍の空母への対抗手段として同様の措置を取るのも一つの方法だろうが、空母の運用は軍事面だけでなく心理的にも計り知れない影響力を持つ。

米海軍の原子力空母が付近の海域を航行しているというだけで沿岸諸国に大きな影響を与える。砲艦外交という言葉があるが、空母はある意味で政治的な兵器といえる。東日本大震災で「ロナルド・レーガン」がいち早く日本近海に駆けつけたというニュースはどれだけ当時の日本社会に安心感を与えたかを思い出せばよく分かるはずだ。


イタリア海軍の「カブール」でも役不足では?


 それでは日本が保有する空母はどのようなタイプが望ましいのだろうか。「22DDH」とほぼ同規模であるイタリア海軍の多目的空母「カブール」を参考にすべきだという意見がある。

 2008年に就役した「カブール」は全長244メートル、全幅39メートルで満載排水量27100トン。斜度12度のスキー・ジャンプ台を備えて、短距離離陸・垂直着陸が可能なハリアーIIジェット戦闘機8機、中型ヘリ12機を搭載。さらに甲板上には10機程度の航空機を係留できる。将来はハリアーIIの代わりにロッキード・マーチンが開発している第5世代のジェット戦闘機でやはり短距離離陸・垂直着陸が可能なF35Bを搭載する予定だとされている。

 航空戦力の運用能力は同規模の「22DDH」に比べて「カブール」の方が断然に高い。ただ、「カブール」は中国海軍の空母を仮想敵として建造されてはいない。

 中国海軍が建造する空母が「ワリヤーグ」のようにスキー・ジャンプ台方式のままなのか、それとも米海軍の原子力空母のようなスチーム・カタパルト方式(将来はリニア技術を使ったカタパルトもありか?)を遮二無二開発するのかは今のところは分からないが、カタパルトの開発に中国が成功した場合、脅威度は格段に増す。

空母の優劣は航空戦力の運用能力の多寡によって決まる。「カブール」級の空母が、カタパルトを備えた6万トン級の中国海軍の新型空母と対峙(たいじ)できるであろうか。早期警戒機の運用などを考えた場合、「カブール」クラスの艦船では日本が取得すべき空母として物足りないのではなかろうか。また、F35Bの開発が難航しており、場合によって開発中止もあり得る点が気がかりだ。せっかく空母を新造しても艦載機がないというのではお話にならない。


英仏の新型空母建造計画を参考にしたら


 そこで参考になりそうなのが英仏が共同で推進している新型空母の建造計画だ。55000トン~70000トン級となる英仏の新型空母の基本的な設計は同じで、全長約280メートル、全幅約70メートル。英国は開発が遅れているF35Bの導入を断念し、F35Cに乗り換えることを決めてスキージャンプ台と着艦拘束ワイヤーを用いる短距離発進・拘束着艦型の空母として建造を進めている。一方、フランスは原子力空母「シャルル・ド・ゴール」で運用済みのラファール戦闘機を新型空母の艦載機とし、スチーム・カタパルトと着艦拘束ワイヤーを用いる空母とする予定だ。

 英仏どちらの方式を採用するのかは意見の分かれるところだろう。英国方式を参考に空母を建造するとなると、第5世代のF35Cを導入できるという“うま味”もあるが、日本は英国のようなF35の共同開発国ではないため、英国と同じようなタイミングで艦載機を取得できるのかという問題も生じるだろう。また取得してから実際に運用するまで相当程度の時間も必要だ。

フランス方式だと、空母の優劣を決める航空戦力の効果的な運用の面では英国方式よりも大きな利点がある。中国がスチームカタパルトの技術を取得して空母建造に踏み切る可能性があることを考えたら、日本が保有する空母はやはりスチームカタパルト方式を選択した方がいいだろう。

 もっとも日本もスチームカタパルトの技術を保有していないから、米国の技術支援を受けて開発するか米国製のものを導入することになる。フランスは「シャルル・ド・ゴール」で米国製のスチームカタパルトを使っている。


最低でも空母3隻態勢はとりたい


 動力を原子力とするか通常動力とするかだが、原子力商船「むつ」の建造と運用の経験があるとはいえ、いきなり原子力空母保有を目指すのは懸命なやり方だとは思わない。1番艦は通常動力として空母運用のノウハウを取得をした後、2番艦以降は通常動力の空母とするのか、それとも原子力空母の建造に踏み切るのかを検討すればいい。建造する空母は欲を言えば4隻、最低でも3隻は欲しいところだ。

 中国が2015年までに通常型の空母2隻を建造するであろうということを考えると、これから新たに艦載機を開発する時間的なゆとりはそんなにない。現有機の中からセレクトするとなると、米国のFA18かフランスのラファールということになる。

 海上自衛隊はこれまで「おおすみ型」「ひゅうが型」と全通甲板の軍艦を建造したが、いずれも中途半端なものに終わった感が否めない。このままでは「22DDH」も同じ運命をたどることになる。日本の国力が右肩上がりならばいいが、そう回り道をしている余裕はない。


(長野支局長 笠原健)



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