【from Editor】
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110704/art11070407240001-n1.htm
「論陣を張る以上は前をキッと見据えていないとね。視線がずれている写真なんてとんでもないわ」
正論調査室次長だった5月のある日。ジャーナリストの櫻井よしこさんと打ち合わせをしていて、こう言われた。櫻井さんの講演録のDVDを制作することになり、パッケージに使う櫻井さんの写真を選んでいたときのことだ。
自分がどのように見られているか。どういう写真なら自分の主張を聞いてもらえるのか。そのあたりをよく分かっているからこそのこだわりなのだと思った。
これまでの著作の写真に歯を見せているものはない。人に厳しいことを言う以上、自らも律していくという姿勢なのだ。
日本テレビでニュースキャスターを務めていた櫻井さんは話して伝えることから、書いて世に問いかける道に転じた。その決意のほどは半生記ともいえる「何があっても大丈夫」(新潮社)に詳しい。その15年後、筋を通す論客として第26回正論大賞を受賞された。
正論特別号「日本再生へ国難を乗り越えよ」のDVDは6月27日に発売された。収録したのは、4月27日に東京で行った大震災復興支援「正論」講演会の映像約90分。大震災で問われた日本のあり方を語り尽くしている。本紙連載の「菅首相に申す」では「首相一人を排除して、連立政権に逃げ込む画策こそ見苦しい」(6月9日付)などと民主党中枢を手厳しく批判する。
だが、櫻井さんの話し方はその筆致から受ける印象とは少し違う。主張している内容は書くことと話すことで変わるわけではないが、話すときはむしろ抑制されたトーンを感じる。櫻井さんの講演会を何度も聴いた。いずれの会場でも聴衆は満足そうにしている。
「そんなにたくさんの自衛隊をぽんぽん、ぽんぽん投入するのであればせめて民主党の方に『自衛隊よ、ありがとう。われわれはあなた方を誇りに思っています』と言ってほしい方、手をあげてください」
「この国難にいろいろ言わないですむでしょうか」
呼びかけに会場の拍手が応える。そんな一体感と臨場感は映像ならではの醍醐味(だいごみ)だろう。
小柄な櫻井さんの背筋はピンと伸び、実際以上に大きく見える。主張をより分かってもらえるためになすべきことは何か。櫻井さんの「姿勢」に教えられた。
(千葉総局長 羽成哲郎)
