http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110630/dst11063003020003-n1.htm
【話の肖像画】群馬大院教授・片田敏孝
■「できうる限り経験を伝えて回ろう」
--釜石小学校に印象的な校歌がありますね。ここでも、児童が声をかけあって全員無事に避難した
片田 井上ひさしさんの作詞です。釜石という言葉がどこにもない不思議な校歌で、「ひょっこりひょうたん島」の主題歌に雰囲気が似ている。特に校歌の3番は、今回子供たちが示した防災教育の精神そのものだと思います。
《しっかりつかむ しっかりつかむ まことの知恵をしっかりつかむ 困ったときは 手を出して ともだちの手をしっかりつかむ 手と手をつないで しっかり生きる》
--被災地の各地に津波の被害から復興してきた記録がありますね
片田 日本全国どこでもそうですが、確かに言葉としての伝承はどこにでもある。三陸地方の「津波てんでんこ」などまさにそうです。地震が起きたら津波が来る。着の身着のままいち早く高台に逃げろと。しかし、伝承を行動に移すのが難しい。
--頭で分かっていても、体が動かない
片田 不正確に伝わっている伝承もありますから、やはり自然の知識をきちんと学び、どう逃げるかを確認しておかなければいけません。そうやってはじめて、伝承を正しく理解したといえる。
--今後、東海地方から西日本にかけても大津波や地震を警戒しなければなりません
片田 同じ失敗はできません。しかし、西日本の沿岸部は、東北の被災地とちがって、堤防などハード面の整備が遅れています。津波の到達時間も、もっと早くなる。
--すぐにでも対策に取り組まなければ
片田 ハードの整備には時間がかかりますが、防災教育や訓練はすぐにでもできる。釜石は試行錯誤して8年かかりましたが、実質的には昨年1年間の成果といえる。今回の大震災の復旧・復興で現地を訪れた全国の自治体の職員は、その惨状をみてあせりを感じています。多くの自治体から「すぐにでも釜石方式の防災教育を取り入れたい」と問い合わせが相次いでいます。
--釜石の復興を手伝いながらで大変ですね
片田 どう対応するか思案してますが、東日本大震災の記憶が鮮明に残るここ1年が勝負だと考えていますので、できうる限り、釜石の経験を伝えて回ろうと考えています。
(北村理)