【産経抄】6月22日 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 







突然襲われないため、ネズミたちが猫の首に鈴をつけようとする。ところがいざ誰がつけるかとなるとみんな尻込みしてしまう。イソップ寓話(ぐうわ)の有名な話だが、同じ寓話集によく似たというか、続編のような話がある。「鈴をつけた犬」だ。

 ▼いきなり人を噛(か)むという犬がいた。困った飼い主はその首に鈴を結わえつけ、遠くからでも分かるようにした。それなのに犬の方は何を勘違いしたのか、鈴を振り振り、これ見よがしに広場を歩きまわるようになり、みんなを辟易(へきえき)させた。

 ▼周囲の悪評などまったく気にせずに居直る。というこの手の「悪党」は、誰とは言わないまでも世界の独裁者たちにピッタリだ。しかし、わが菅直人首相もその仲間入りをしようとしているのではないか。首相自身の「退陣」をめぐる言動を見ると、そんな気さえしてくる。

 ▼不信任決議案こそ否決されたが、そのためにいったんは「退陣表明」までした。事実上首に鈴をつけられたも同然であり「死に体」のはずでもある。ところがその後はやれ2次補正だ、やれ公債特例法だのと条件を持ち出しては、退陣時期を明言しようとせず、首相の座に居座っている。

 ▼それどころか先週はこんな「暴言」も飛び出した。「国会には私の顔も見たくないという人もいる。顔を見たくなかったら早く法案を通せ」。法律を成立させないんだったら辞めてやんないよ、というのであれば、もはや独裁者の言葉でしかない。

 ▼国会はそれで押し通せるのかもしれない。だが世論調査では圧倒的多数が長期続投にNOである。「鈴をつけた犬」ならぬ首相に辟易し、顔も見たくないというのは多くの国民の方なのだ。そのことを忘れてもらっては困る。