奈良文化財研究所
天武天皇(在位673~686年)の時代に造営が始まったとされる奈良県橿原市の藤原宮跡(特別史跡)で、造営期に建築資材を運んだ運河跡から見つかった馬の後ろ足の骨に、過度な運動による関節炎のような症状があることが17日、奈良文化財研究所の分析でわかった。奈文研によると、馬の骨の病変が見つかる例は珍しく、労役で酷使されたことが原因ではないか-としている。
病変が確認されたのは左後ろ足の「飛節(ひせつ)」(関節)部分の「距骨(きょこつ)」と「中心足根骨(そくこんこつ)」。足の酷使による炎症で骨の一部が溶け、スポンジ状に肥大化する「飛節内腫(ないしゅ)」と呼ばれる症状で、今でも競走馬や労役馬で見られるという。
飛鳥から藤原京に都が遷(うつ)る694年より前、天武朝の年号が記された木簡(もっかん)が出土した運河跡から、平成20年度の調査で発見された。
調査した奈文研埋蔵文化財センターの山崎健研究員(動物考古学)は「牛だけでなく馬も使役動物として、丸太や瓦などを一生懸命運んでいた情景がイメージできる貴重な資料だ」と話している。
研究成果は「奈良文化財研究所紀要2011」に掲載されている。
関節炎とみられる変形が確認された藤原宮跡で見つかった馬の足の骨(奈良文化財研究所提供)