産経抄6月12日。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 





http://sankei.jp.msn.com/world/news/110612/erp11061202500000-n1.htm





ドイツなど欧米に吹き荒れる「O104」の嵐はまだ収まりそうにない。強い毒性を持つ腸管出血性大腸菌の名前なのだが、すでに十数カ国に広まり、感染者は2千人を超えている。欧州のテレビニュースはこの話で持ちきりらしい。

 ▼感染源としてはドイツ国内のモヤシが濃厚というが、一時はスペインのキュウリが疑われた。このため風評被害でスペイン産野菜が売れなくなった。一方でロシア政府はEUからの生野菜輸入を禁止するなど、欧州大陸の中にギスギスした空気が流れている。

 ▼言うまでもなく欧州の大半の国は陸続きである。人もモノもかなり自由に行き交うことができる。まさに「欧州はひとつ」なのだが、逆に目に見えぬ病原菌に対し日本のような「水際作戦」は難しい。感染源の特定が遅れるのもそのためだろう。

 ▼そんな折、ドイツ政府が「脱原発」を決めた。11年後までに今の17基を全廃するという。大震災以来の反原発ムードの中で「日本も倣うべきだ」という大合唱も聞こえる。だがO104で見せつけられた欧州と日本の地政学上の違いを考えると、そう単純な話ではない。

 ▼ドイツはすでに8基の原発を停止し、不足する電力を陸続きの原発推進国フランスなどから買っている。原発全廃となればさらに増えるのは確実だ。「それでは見せかけの脱原発だ」との批判もあるが、島国の日本にはそもそも、電力を融通してもらえる国もないのである。

 ▼さらにフランスがドイツとの国境近くに原発を新設すれば、意味がなくなるとして「脱原発」実現を疑う声もあるという。日本が国内の実情に合わせ将来の原発を考えるのはいい。だが「外国がそうしたから」では国は危うくなる。