1970年代後半、環境保護団体が幾つか集まって発足した西ドイツの「緑の党」。結党したのはいいけど、まだエコロジーが売り文句にならなかった時代ゆえ、選挙に出ても最低得票率が満たせず議席が取れない。で、やむなく、60年代の学生運動活動家を招いて基盤を固めた。これが間違いの元でしたね。
83年には「緑の党」が連邦議会で議席も得て、広く認識され出した頃から、新左翼グループが党を乗っ取る形で主流を占め、もともと居た保守的な環境運動家は追い出されて、党自体がぐっと左巻きになってしまった。なにしろ悪名高き元赤軍派まで入ったんだもの。どこの世界でも、悪貨は良貨を駆逐しちゃうのです。
「緑の党」は、90年に東ドイツで民主化運動をしていた「同盟90」と合体し、以降は「同盟90/緑の党」を名乗るも、左巻き路線は変わらず。彼らの主張は、反核、反原発、反戦、反NATO 、反米、反消費社会、反資本主義、環境保護に同性愛支持などなど。ぜーんぜん、緑じゃないじゃん、と云いたくなるほど真っ赤な政党です。
ソ連・東欧圏の社会主義政権崩壊と共に西欧諸国ではことごとく左翼陣営が支持を失ったのに、ドイツで「緑の党」が躍進したのは、社会主義しか知らない東独の人々が統一ドイツ に加わったからでしょうね。左翼がそれなりに支持されたと云うワケです。
さて、盛んに報道されるドイツの脱原発、反原発。「同盟90/緑の党」は、福島原発事故をチャンスと見て、放射能の恐怖を大宣伝して集票に結びつけた。勢いに押され、政権基盤が弱い政府与党は、「同盟90/緑の党」に擦り寄る形で、原発停止を発表してしまった。だけどヒトゴトながら、ドイツ はあれでいいんだろうかと疑問です。電力コストアップ で欧州全体の産業経済に陰りが出るかも知れないのに。
もっとも、国家のエネルギー政策には、政界の力加減が大きく影響する。今後、わが国の原発事故が無事に収束すれば、「同盟90/緑の党」だって、いつまでも恐怖感撒き散らし作戦を続けるわけにもいかないだろうし、党の勢力だって落ちるに違いない。そうなると、フランス から高い電力を買わされるのは嫌だとか、欧州全体の経済力を維持せよ、なんて声がドイツ 国内で出てきて、案外、あっさり原発再稼動に至るような気がします。
なにしろ、ドイツ って国はわが国同様、押しも押されもせぬ経済大国。こと経済に関しては、非常にしっかりした国なのです。原発停止騒ぎなんて、今だけの話だと思うなあ。