日韓図書協定をめぐる自民党部会の要旨。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 







日韓図書協定の国会承認をめぐり20日の自民党外交部会で行われた主なやり取りは次の通り。

 外務省アジア大洋州局・石兼公博参事官「韓国にある日本由来の図書について概要をまとめた。国史編纂(へんさん)委員会に約2万8000冊の対馬宗家文書がある。朝鮮総督府が日本国内にあった対馬宗家の文書を買い上げ、朝鮮半島に持ち込んだ。敗戦で朝鮮半島に残され、継承された。貴重なものもあり、日本国内にある関係資料は1600点が重要文化財に指定されている」

 「韓国の国立中央図書館に日本関連図書が数十万冊、国家記録院に日帝主要期図書約5000冊と約4万点の総督府公文書、85万点の図面、個人情報記録、土地台帳などがある。韓国学中央研究院には宮内省直轄機関の図書が保存され、ソウル大図書館にも京城帝国大学所蔵の文書がある」

 新藤義孝衆院議員「朝鮮総督府保有の図書を引き渡す日韓図書協定の趣旨は有意義だが、日本の統治時代に総督府を経由した日本の書籍が韓国側に残っている。日本にあるものは引き渡し、韓国にあるものをどうして日本に引き渡さないのか。それで初めて協定の趣旨が生きる。このまま国会を通すわけにいかない。こういった文書があることが分かった以上、日本側から韓国に引き渡しの交渉を始めるべきではないか。なぜこの状況で国会で審議しなければならないのか」

 佐藤正久参院議員「文化協力ならば双務性が大原則だ。一方的に『そうですか』というのは主権国家としておかしい」

 平沢勝栄衆院議員「日韓図書協定で引き渡すのは、なぜ1205冊なのか。朝鮮王室儀軌は167冊だけなのに。だれが増やせと言ったのか。選んだのはだれか。基準は何か」

 石兼氏「貴重なものがあるのが分かったのだから双務的にという考えもあると思うが、図書協定は歴史を踏まえた未来志向の関係を作るために自発的にやるものだ。協定の対象となっている図書と、韓国にある日本由来の図書の経緯、背景には相違があるので必ずしも同列にされない。乱暴に言えば、(協定の)図書は日本の統治期間中に統治機関を通じて日本にもたらされたものだ。他方、朝鮮半島にある図書は、日本が統治している間に日本が朝鮮半島に持ち込み、もしくは朝鮮半島の中で集めて敗戦とともに置いていって継承された。政府はこの観点で今回は別なものという姿勢で扱う」

「研究を深める観点から、韓国が保有している資料へのアクセスを改善したり、別のかたちのや、いろいろな交流を深めることで前向きな行動を外務省として進めていきたい。韓国の国会は(日本に引き渡しを求める決議を)2006年と2010年にほぼ全会一致で可決した。韓国の関心が非常に高いことを考慮に入れた。その中では167冊だったが、関心があるのはもっと広範にあったので、それを元にわれわれが考えた」

 西野あきら衆院議員「未来志向で政府は(引き渡しを)決断したと思うが、その決断は韓国の国益を考えているが、わが国の国益を考えていない。慎重を期すべきだ。片務的なところもある。外交で折衝すべきではないか」

 柴山昌彦衆院議員「日韓関係で懸案事項があるのに、要求されていないものを引き渡すのは極めて稚拙なメッセージだ。筋を通さない解決はあり得ない。先方にある文化財も明らかになった以上、何らかの落とし前をつけない限り、無条件で容認とは到底言えない」

 岸信夫参院議員「引き渡しが(昨年8月の)菅直人首相の談話から生まれていることに大きな疑問がある。向こうも渡すというような話が本来韓国から出てきてこそ、未来志向が構築できる」

 石兼氏「日韓関係の未来志向は、図書協定とは別に経済や安全保障などの話も進めていく。それが日本の国益と考える。(日本由来の図書を)韓国が自発的に渡すという話はない。まずは(日本由来の図書への)アクセス改善を前に進めたい。韓国とも協議したい」

 宇都隆史参院議員「片務性の問題ではない。1965年にお互い文化財の請求権を放棄した。それを超えて返すことが、どういう意味があるか。図書協定で何のメリットがあるのか、まったく分からない。あるとすれば菅政権に対するメリット、ありがとうと感謝される外務省だけではないか。歴史的に国家に対し何のメリットがあるのか分からない」

「例外的な扱いは、法的に解決されたものの中に例外があることを認めることになる。これを認めれば、強制連行や慰安婦問題の話、いわゆる統治下時代に起こったさまざまな問題で、かつ今は法的に解決されたはずの問題を蒸し返すことにならないか。そういうデメリットが必ず存在する。竹島などをめぐるいろいろな問題を抱え、悪化させるような行動を向こうが進捗(しんちょく)させる中で引き渡したら誤ったメッセージになる。少なくとも竹島は(開発などを)進行させないと言質をとるべきだ」

 山本一太参院議員「今まで出た意見はすべて否定的、慎重だ。なぜ違和感があるか。昨年8月の首相談話から始まっている。この発想が基本的に間違っている。個人の趣味とか外交で何か得点を挙げようとして、外交戦略をねじ曲げている。民主党政権の一番の特徴だ。簡単にできるというめども何もないまま勝手に約束する。TPP(環太平洋戦略的経済連携)とそっくりだ。ダボス会議で言ったら国際公約と思われる。でも根回しを党内でもやっていない。相手に期待させていながら応えられない。民主党外交の最悪のパターンの象徴みたいな話だ」

 「私は首相談話に反対だった。引き渡しの話も、いきあたりばったりだ。韓国で国会決議があって関心が高いから、パフォーマンスとして踏み込んだ。未来志向のために自発的に行うと言っても、別に政府が首相談話で約束しなくても、未来志向の関係はできたのに、寝た子を起こすというか、向こうの関心を引くためにやったという根本のところから気にくわない。だから自民党として賛成すべきではない。部会はすべて否定的な意見だ。首相や仙谷由人前官房長官の個人の趣味かもしれないが、外交戦略として誤っている。賛成できない」

 新藤氏「昨年8月10日に首相談話が出て、11月14日に協定に署名した。しかし、11月11日まで韓国に日本由来の図書があることを外務省は認識していなかった。基礎的な事実を知らずに交渉したことを外務省は認めてほしい。(日本由来の図書の)事実が判明したのだから、正式に日韓図書協定の趣旨に即して交渉しようよと韓国側に申し入れるべきだ」

小野寺五典外交部会長「1965年の国交正常化で決着したのが変わった。首相と(岡田克也元)外相が出した話の政治決断だった」

 平沢氏「だれが167冊から増やせと言ったのか。日本側で引き渡しの範囲を選んだのはだれか」

 衛藤晟一参院議員「上からの指示でやったならそう言ってほしいが、石兼氏は歴史を踏まえた未来の文化交流と言った。外務省もやるべきだと考えたというが、稚拙すぎる。民主党政権を外務省が振り付けたということになる。到底認められない。政治家の下請けでやったなら、そう言ってほしい」

 石兼氏「昨年の日韓(併合)100年の中で歴史を踏まえて未来志向的な関係をどうつくるかは首相の関心であり、(当時の岡田克也)外相の関心だった。その中で何ができるか、官邸、外務省で考え、どういう観点が重要かの選択肢を提示した。その中で外相も首相もこれをやっていこうと決断した」

 衛藤氏「ならば首相や外相に、これは大きな問題を起こすと助言したのか」

 外務省・木寺昌人官房長「外務省としては政治レベルに判断していただくということで選択肢を用意してきた。政治レベルの判断を仰ぎ、方向性が出れば外務省がいろいろな材料を整えていくのが外交の仕事だと思っている。外務省としては韓国との大変難しい関係をどうやって前に進めていくかの思いの中で仕事をしている」

 石兼氏「1965年の日韓基本条約の話や自民党政権の対応も示した上で、政治的決断をしていただいた」

 小野寺氏「肯定的な意見は一つもない。意見を集約し、ここで決定できるかどうかの判断を一任されたが、とても決定できる状況ではない。むしろ否定的だった。政調会長らに伝えたい」

 新藤氏「外交部会として今国会での審議は反対だととりまとめてほしい。なぜこれだけ条件が不備なのに、いま国会で審議しなければならないのか。韓国に引き渡しを求める交渉を始めたらどうなのか」

石兼氏「この国会でというのは、そもそもそういう約束をしたのがけしからんということだろうが、昨年8月の首相談話、11月の署名でできた協定なので、できる限り速やかに審議いただくことが日韓関係からもいいだろうと強く考えている。審議も反対というのは重く受け止め、上にも報告したいが、(松本剛明)外相からは国会審議を通じて真摯(しんし)に答弁したいということを伝えるようにといわれている」

 新藤氏「日本の図書が韓国に残っているから、日本から韓国に引き渡してくれと交渉をすべきだといっているのに、交渉するかしないか明言していない。5月21、22日に李明博大統領が来るから、それまでに協定を承認させたいから国会に出しているのか。なぜ条件不備で無理やり国会審議をやろうとしているのか」

 平沢氏「(図書協定で韓国に引き渡す文化財は)どういう基準でだれが選んだのか答えてほしい」

 石兼氏「選択は首相談話の基準に合致するものを関係省庁で選択した。結局、残ったのは宮内庁書陵部のものだった。(日本由来の図書の)引き渡し交渉をすべきだという話だが、現在の政府の考え方は、それとこれは別なものと考えている。なぜかというと、趣旨として今回は自発的に行うこと、それぞれの文書がそれぞれのところにある背景、経緯が異なることから、これは別物として考えるべきだというのが政府の立場だ。昨年11月に協定に署名したので、ぜひ今国会で審議していただきたいと強く思っている」

 小野寺氏「部会の意見のほとんどが審議することに反対だ。今国会の審議については反対で、内容については特に議論はこれから外務省がさまざま提案をしていく中で対応を考えると。とりあえず審議は反対ということで外交部会の意見集約でいいか(いいです、の声)。では、そうする」