【from Editor】3・11大地震
宮城県の沿岸の都市、ある酒屋が今回の大地震と津波で壊滅的な打撃を受けた。片づけに忙しい店の若者。老いた母が見守る。そこに制服の自衛官が来て、1枚の紙を示した。「招集令状」である。若者は元自衛官であり、万が一の時に招集に応じる即応予備自衛官であったのだ。
若者は令状を示す自衛官に直立して、「了解しました」と招集に応じる意思を示した。横からテレビのリポーターが「家がこんな状態なのに行くんですか」と聞く。
「そのために何年も訓練してきたんです。いま行かなければ、10年、20年と後悔しますから」
そばにいた母が「人のためだから、行きなさい。うちのことは何とかするから」と声をかけた。テレビニュースの一コマである。
来年のロンドン五輪代表に決まっている射撃の森ゆかり選手も即応予備自衛官。主婦である彼女には招集令状は来ていないが、森さんは「訓練を受けてきたので、被災地に行って活動したい」と語っている。
元自衛官で、万が一の際、自衛隊に復帰して現役なみの活動を期待されているのが即応予備自衛官である。現在約5600人。その他の元自衛官や一般の人が訓練を受けて、万が一の時に活動するのが予備自衛官で約3万2千人。いずれも志願である。
今回の震災ではこれまで延べ約1300人の即応予備自衛官が招集された。彼らは自分の仕事を投げ出して、任務に当たっている。
もちろん、現役の自衛官も大活躍だ。行方不明の被災者を懸命に捜す自衛隊員。隊員のひとりに奥さんから携帯メールが入った。
「お父さん、無理しないで」
隊員はすぐに返事を送った。
「いま、無理しなかったら、いつ無理をするんだ」
宮城県で行方不明者の捜索の指揮をとっているある自衛官は「隊員は精神的にも肉体的にも限界を超えている。しかし、ここでわれわれが弱音を吐いたら、だれが行方不明者の捜索を行うのか。石にしがみついてでも最後までやり抜きます」と語った。
過去、自衛隊を取り巻く環境は決して温かいものばかりではなかった。自衛隊いじめのようなことも事実あった。だが、そんなことはこの際、どうでもいい。事態が収束に向かったとき、さも何事もなかったかのような顔して、「自衛隊は暴力装置だ」などとうそぶくことだけは、どうか、やめてもらいたいと思うばかりである。(編集委員 大野敏明)
がれきを片付ける自衛隊員=3日午後、岩手県宮古市
多くの児童が行方不明になっている大川小周辺で、集中捜索を行う自衛隊員
=2日午前、宮城県石巻市
続報!辻本清美ピースボートの悪行!!