【トレンド現象学】
中国のインターネット上で当局への批判を込めた造語、検閲を逃れるための暗語が広がっている。マカオで大金を賭けたり不動産投機に走ったりする中国共産党や政府の「幹部」を、皮肉を込めて発音の近い「ギャンブラー」と呼ぶことや「中国ジャスミン革命」集会の呼びかけなど、デモを「散歩」と言い換えることも有名になった。
例えば、批判目的で「毛沢東」とネット上で書けば当局にすぐ削除されるが、毛沢東を指して中国王朝の最初の皇帝の意味の「高祖」と書けば検閲逃れも可能だ。1949年に成立した新中国の最初の“皇帝”という皮肉が込められている。
新華社電によると、昨年末段階で、携帯電話経由を含む中国のインターネット利用者数は4億5700万人で、全人口に占める割合は34・3%となった。3人に1人がネットユーザーだが、その大半は若者。豊かな想像力から生み出される言葉は、現実を揶(や)揄(ゆ)したものが多い。
とくに最近は、英語を主体にした造語が多く生まれ、ネット検閲とのイタチごっこになるが、新語がわき出るように生まれてくるのが特徴だ。
銃(ガン)で統治する政府(ガバメント)を意味する「ガンバーメント(Gunverment)」。狂った(クレイジー)民主主義(デモクラシー)を指して「デモクレイジー(Democrazy)」。政府の関係部門、省庁(デパートメント)はすべて党(パーティー)が管轄しているとの皮肉を込めた「デパーティーメント(Departyment)」など。
格差社会に苦しむ民衆の思いも反映される。中国語で「房子」という住宅(ハウス)ローンに振り回される奴隷(スレーブ)は「ハウスレーブ(Houslave、房奴)」。アリ(アント)と同じように働き続けるしかない市民(シチズン)は「アンチズン(Antizen、蟻民)」。不動産(プロパティー)バブル過熱が貧困(プアー)層を苦しめるとの「プロプアーティ(Propoorty)」など。
さらに、官製メディアの報道は信頼が置けないらしく、中国の記者は冗談(ジョーク)ばかりのジャーナリスト「ジョーカーリスト(Jokarlist)」といわれる。大学生などインテリ層が、自分たちの国をどう見ているかが如実に映し出されている。
(上海 河崎真澄)
インターネットで呼びかけられた「中国ジャスミン革命」集会の情報をみて上海市内の繁華街に来たとみられる若者を連行する公安関係者ら。ネット上には当局を批判する若者らの「新語」が続々誕生している(2月27日、河崎真澄撮影)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110417/chn11041718010003-n1.htm