【主張】復興会議設置。
東日本大震災の復興計画を提言する「復興構想会議」(議長・五百旗頭(いおきべ)真防衛大学校校長)の設置が閣議決定された。14日に初会合を開き、6月をめどに基本的提言を取りまとめるという。
被災者に希望を届けるためにも、復興の具体像と道筋を一刻も早く示すことは重要だが、問題は政府・民主党内に、すでに同様の組織が存在することだ。
菅直人首相は「大きな夢を持った復興計画を進めたい」と述べているものの、復興会議の提言がどこまで生かされるのかについては疑問とする見方もある。首相はまず、会議の位置づけや権限をはっきりさせるべきだ。
被災地の復旧・復興に関する検討組織としては、政府には被災地復旧検討会議があるほか、民主党内にも岡田克也幹事長を委員長とする復旧・復興検討委員会がある。官僚からは「指揮系統がよく分からない」といった困惑の声も聞かれる。復興会議の設置は、こうした組織に、さらに屋上屋を架すことになりかねない。
そもそも復興会議に検討を委ねる前に、首相自らが復興の基本的な方針を示すべきではないのか。大枠の方向性がないままでは議論は散漫になるだけだ。
復興会議のモデルは、阪神大震災で大きな役割を果たした「阪神・淡路復興委員会」だという。この復興委員会が機能したのは、国土事務次官だった下河辺淳氏を委員長に据え、官僚組織や経済界、民間の発想をうまく結集したからだ。これに対し、復興会議は各省庁をたばねられるような大物官僚OBを起用していない。菅政権は「政治主導」として官僚を遠ざけてきた。とても同じようにいくとは思えない。
今回の震災被害は、原発事故も加わり、これまでの自然災害と比べものにならない。津波や地震に強い町づくりとする必要もある。被災地を単に元の状態に戻すのではなく、東北や関東を日本全体の中でどういうエリアとして位置づけるか、新時代を見据えた大局的な視座が求められている。
福島第1原子力発電所事故で日本は国際社会の信用を失った。海外が目を見張るような復興を実現することで、「日本復活」を強く示す機会ともしたい。今回のような国民の総力を必要とする復興は、強い政治リーダーがいてこそ成し遂げられる。