「これまで起こった災難や苦労のとき、おまえはいつもおれの側(そば)にいてくれたね。こうして病気になっても必ず付き添っていた。お前はね…」。長い間昏睡(こんすい)状態だった男が正気にもどり、傍らで看病している妻にささやいた。
▼妻の目から感動の涙があふれる。「言ってちょうだい、あなた」。「結局おまえはいつもおれに不幸を持ってきたことになる!」。『ドイツ産ジョーク集888』(田中紀久子訳編)にある「貧乏神」というジョークだ。
▼福島第1原発の事故を受けて、ドイツでは反原発を掲げる緑の党が攻勢に出ている。窮地に立たされたメルケル首相の目には、日本という国が貧乏神に映っているのかもしれない。
▼統一地方選の前半戦は、民主党の惨敗という結果に終わった。敗因は明らかだ。東日本大震災の復興支援や原発事故への対応で、指導力を発揮できない菅直人政権に、レッドカードが突きつけられている。落選の憂き目に遭った候補者たちにとっては菅首相が、貧乏神に他ならない。もっとも首相は、惨敗の責任をとる気持ちなど、これっぽっちもないようだ。「新たな日本をつくり出す努力を」などと、きのうも威勢だけはいい発言が飛び出した。
▼「緊急呼び出し」というジョークをもうひとつ。「ご搭乗のお客さまの中に、お医者さまがおられましたら、至急コックピットまでお越しください」。飛行機の中で機長のアナウンスを聞いた一人の男性が、立ち上がった。数分後には、その医者からアナウンスがある。「ご搭乗のお客さまの中に、パイロットがおられましたら…」。
▼首相に代わり、復興に向けて国民の心をひとつにできる人物を、緊急に呼び出したい。