安らげる住まいを大至急。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 







【主張】仮設住宅



東日本大震災で自宅を失い、今なお避難所生活を送る被災者は16万人を超える。3週間以上が経過して、プライバシーもない暮らしは精神的にもぎりぎりだ。安らげる地元での仮設住宅建設が何よりも急務である。

 岩手県陸前高田市では仮設住宅の第1号が完成し、5日に抽選が行われた。避難所にあてられた中学校の校庭に、突貫工事で建てられた36戸の2DK住宅で、高齢者や障害者以外の一般入居枠では53倍の高い競争率となった。

 国土交通省は現時点で、岩手、宮城、福島3県などで必要な仮設住宅数を計6万戸と見込んでいる。だが、着工済みか着工が決まった住宅は約5200戸にすぎない。建設の遅れは明らかだ。

 被災者数で今回を下回る16年前の阪神大震災でさえ、ピーク時は4万8千戸の仮設住宅が建設された。はたしてこの数で十分かという疑問もある。政府は被災世帯の実情を見定め、早め早めに手を打つ必要があるだろう。

 避難から3週間たつと、狭い避難所暮らしのストレスが大きな問題となってくる。心を落ち着け、将来の自立の道を探るためにも風呂やトイレ、台所などがある“自分の家”で暮らすことがその第一歩となる。

 深刻な被害を受けたにもかかわらず、被災者の大多数は「引き続き地元で生活したい」との思いが強い。復興の担い手を地元で確保しておく意味でも、仮設住宅の増設は不可欠だ。

 今回の震災で建設のピッチがあがらない理由は、ガソリン不足で候補地選定が思うように進まなかったことが大きい。しかも高台にある学校の校庭や公園など適した場所は限られている。電気や水道が引ける条件さえ満たせば、民間の土地であっても提供してもらうしかない。国や県は率先して説得にあたるべきだ。

 建設資材の確保にも黄信号がともっている。仮設住宅には住宅用ベニヤ板が欠かせない。それが震災の影響で、国内生産の3割程度を担う岩手、宮城両県の工場が操業停止に追い込まれた。

 幸い、工場は中部地方など地震の被害を受けていない地域にもある。業界も増産には積極的に応じる姿勢だ。政府は、民間の協力態勢をフルに引き出す一方で、足りない資材は輸入も含めて迅速に対応すべきである。