【ふるさと便り】江の“知られざる”
NHK大河ドラマのヒロインとして注目を集める浅井三姉妹の三女、江の最初の娘、天真院寛子(完子)の墓と位牌(いはい)、天真院の長男の九条康道が写経した法華経3巻(縦約30センチ、横約84センチ~約340センチ)が京都市東山区の東福寺で見つかり、14日、墓と位牌の写真や写経の実物の公開が同寺の涅槃会(ねはんえ)法要に合わせて始まった。16日まで。
今回見つかったのは、同寺境内にある九条家の墓地に眠っていた宝篋印塔(ほうきょいんとう)の墓と、境内の開山堂にある九条家の仏壇に安置されていた高さ約60センチの位牌。墓の花挿しや位牌に「天真院」と記されており、いずれも天真院のものとみられる。また写経は、九条康道が天真院の月忌、一周忌、七周忌の供養のために奉納したものと確認された。
江は文禄元(1592)年、豊臣秀吉の姉の子で秀吉の養子になり岐阜城主となった秀勝と、2度目の結婚。間もなく秀勝は死亡したが、天真院は江の初めての子として生まれた。江はその後、徳川秀忠と3度目の結婚。天真院は江の姉の淀殿に引き取られ、後に関白の九条幸家(忠栄)に嫁いだ。
東福寺は九条家の菩提(ぼだい)寺で、寺史に「天真院」という名で同寺に葬られたことが記してあったことから、ドラマ放映をきっかけに改めて調査したところ、開山堂の仏壇奥から天真院の位牌が見つかり、九条家の墓地から天真院の墓が見つかった。これとは別に文化財調査も進め、その中で天真院の長男による供養経も見つかったという。
同寺の五十部泰至寺務長は「まとめて発見され驚いている。江は千姫や東福門院和子など多くの姫君を生み、徳川家や天皇家の基礎を築いたが、実は最初に生んだ姫君、天真院は江戸時代の摂関家、九条家の基礎を築いた。織田、豊臣、徳川、天皇家、摂関家の家系が一本の糸で結ばれていることに歴史の数奇さを感じる」と話している。
江の最初の子、天真院の長男による供養経=京都市東山区の東福寺
東福寺で発見された資料