【産経抄】3月14日 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 







阪神大震災が起こったとき、米国に滞在していた。故郷、神戸の炎上を映し出すテレビ画面を、ただ惚(ほう)けたように見つめていた記憶がある。CNNテレビに、小紙ワシントン総局の古森義久記者が招かれ、キャスターの質問に答えていた。

 ▼「なぜ、日本人はこれほどの惨事のなかで、暴動も略奪もなく、冷静、沈着に行動できるのですか」。古森記者がどのように説明したのか、忘れてしまった。小欄なら、「日本人だから」としか、答えようがない。

 ▼マグニチュード9・0という世界最大級の東日本大震災に見舞われた日本に、世界の耳目が再び集まっている。ある中国紙は、「多くの中国人が、地震発生後の日本人の秩序ある行動に敬服している」と伝えたという。

 ▼一方で、福島第1原発の爆発には、一様に衝撃を受けたもようだ。各国のメディアは、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故や米スリーマイル島原発事故を引き合いに出して、報じている。東京電力は、廃炉も覚悟の上で、海水を満たす非常手段に踏み切った。世界最高水準の日本の原子力技術が、事故による放射能漏れを最小限に抑える面でも、発揮されることを期待したい。

 ▼ただ政府の対応ははなはだ心もとない。爆発の事実を発表したのは、2時間以上たってからだった。退避指示の範囲を徐々に広げるのは、かえって周辺住民の不安を募らせるばかりだ。12日朝の菅直人首相の現地視察が、現場の作業を遅らせた原因のひとつとすれば、何をか言わんや、である。

 ▼有史以来、地球上で起きた大地震の2割が、日本列島を襲ったといわれる。日本人は過酷な宿命を受け入れつつも、立ち向かってきた。その真価が試されている。