【政論】知らぬで済むなら法律いらぬ。
「ごめんで済むなら警察はいらない」という俗語があるように「知らなかった」で済むならば法律はいらない。政治資金規正法が禁じる外国人からの献金を受けていたことが発覚しながら菅直人首相はシラを切り続ける。そこには国家のリーダーとしての自覚も国家観もうかがえない。
「日本名の方なので日本国籍と思っていた。外国籍の方とはまったく承知いたしていない…」
首相は11日の参院決算委員会でこう繰り返した。
だが、首相は在日韓国人男性から計104万円もの献金を受け、一緒に釣りに出かけ、複数回にわたって会食したという。なおかつ特定人物からの100万円以上の献金は「比較的まれなことだ」とも認めた。
にもかかわらず男性が外国籍だと知らなかったとは…。にわかには信じ難い。
ましてこの男性は在日韓国人系の「旧横浜商銀信用組合」(現中央商銀信組)の非常勤理事を長年務めた人物である。これについても首相は「そういう立場にあることも全く知らなかった」と釈明したが、もし本当ならばとんでもない迂(う)闊(かつ)さではないか。もはや危機管理というレベルではない。
しかも首相は「私の代で政治とカネの問題に終止符を打つ」(2月8日)と大見えを切り、政治資金規正法違反で強制起訴された民主党の小沢一郎元代表を党員資格停止に追い込んだはず。首相が掲げる「クリーンな政治」の看板はもはや地に堕(お)ちた。
首相はあくまで続投する考えのようだが、前原誠司前外相が6日に在日韓国人から計25万円の献金を受けたことを認め外相を引責辞任したばかり。首相が「知らぬ存ぜぬ」では、内閣の一貫性も整合性もあったものではない。
実は首相には教訓として学んでおくべき先例があった。岡崎トミ子前国家公安委員長の事例である。
平成16年、岡崎氏の政治団体が13年に朝鮮籍で朝鮮学校理事長の男性と韓国籍のパチンコ店経営者からそれぞれ2万円ずつ受け取っていたことが発覚した。産経新聞の指摘を受け、岡崎氏は「違法と気付かなかった」とコメントしたが、首相と前原氏は内閣改造前にこの貴重な体験談をよく聞いておくべきだった。
もちろん在日韓国・朝鮮人は「通名」が定着しており国籍を確認するのは難しい。自民党など野党にも同様の問題が存在するかもしれない。だが、国家を統治する内閣の一員ならば誰よりも襟を正すべきであり、言い逃れは通用しない。
「『もっと元気な歌もありうるのかな』という意見があった」
首相は11日の参院決算委で、平成11年の国旗国歌法案採決に反対した理由を問われ、こう答えた。首相は14年5月にラジオ日本の番組に出演した際、番組恒例の国歌斉唱時に起立しようとせず、君が代も歌わなかったとされる。
前原氏も岡崎氏も同じく国旗国歌法に反対している。3人とも永住外国人への地方参政権付与に賛成という共通項もある。民主党が先の衆院選で在日本大韓民国民団の全面支援を受けたことも周知の事実だ。
政治資金規正法が外国人からの献金を認めないのは国政が外国勢力の影響を受けることを避けるためだが、首相や前原氏は本当に理解しているのだろうか。どうも国家や主権に対する意識に決定的に欠けているように思えてならない。
(阿比留瑠比)