【主張】「竹島放棄」署名
菅直人首相の側近である民主党の土肥(どい)隆一衆院議員が、日本政府に対し竹島の領有権放棄を求める韓国側との共同宣言に署名していたことが明らかになった。政権与党の議員として国民への許し難い背信行為である。
土肥氏は衆院政治倫理審査会の会長を務め、菅首相が率いる「国のかたち研究会」の顧問もしている。同氏は政倫審会長と党常任幹事会議長を辞任する意向を示したが、それだけでは済まされない。
土肥氏は菅首相と長年行動をともにしてきた当選7回のベテラン議員でもある。同氏が内閣の一員でないことから、首相は扱いを民主党の岡田克也幹事長らに委ねているが、無責任な対応だ。
事の重大さを考えれば、土肥氏の行為は議員辞職に値する。菅首相自らが身内の土肥氏を厳しく処すべきだ。それがリーダーとして最低限の務めである。
菅首相は竹島について「日本固有の領土であるという立場はまったく変わらない」と従来の発言を繰り返した。枝野幸男官房長官も「竹島が日本領土であるという政府、民主党の立場と相いれない」と述べるにとどめた。
竹島が日本固有の領土であることに加え、「韓国が竹島を不法占拠している」が日本政府の公式な立場である。菅首相らはなぜ「不法占拠」と言わないのか。北方領土問題でも、そうだ。領土問題に対する民主党政権の主権意識はあまりにも希薄である。
問題の共同宣言は韓国の独立運動を記念した3月1日の行事「3・1節」に先立ち、2月末、日韓キリスト教議員連盟が発表した。土肥氏は日本側の会長である。
「竹島の領有権放棄」のほか、「憲法改正の中断」「日本の侵略を美化する教科書の発刊禁止」などを求めている。共同宣言の体裁をとっているが、韓国側の一方的な主張ばかりだ。
土肥氏は会見で「文面を十分に精査しなかった結果だ。心から国民におわびする」と陳謝した。宣言文をよく見て、署名を拒否すべきだった。それが日本の国会議員として最低限取るべき行動だ。
共同宣言は、竹島を明記した学習指導要領解説書に基づく中学教科書の検定結果が今春、発表されることにも狙いを定めている。菅政権には、検定合格後の再修正要求などの内政干渉には絶対に応じない覚悟を強く求めたい。