【外交文書公開】
昭和47年の沖縄返還をめぐり、ソ連が日本の軍備増強や台湾に対する関与について、日本側に警戒感を示していたことが18日、外務省が公開した外交文書で明らかになった。東西冷戦下で沖縄返還に伴う地域情勢の変化にソ連が強い関心を寄せていたことがうかがえる。
46年6月28日付で牛場信彦駐米大使が愛知揆一外相にあてた「極秘」指定文書によると、米国駐在のソ連海軍大佐が「沖縄の返還に伴い、日本は台湾の防衛を引き受けたものと思うが、その真偽はどうか」などと日本側に質問してきた。
日本側の駐在武官が「その事実はない」と回答すると、大佐は「領海の接近などにより、台湾問題をめぐって中共(中国)との関係が微妙になってくる」との懸念を表明。日本側は「そう重要な問題は起こらないと思う」と返答した。
さらに大佐は、日本がペルシャ湾周辺地域から必要原油量の90%を輸入していることを指摘した上で、日本までの海上交通路(シーレーン)の安全確保を念頭に「日本海軍が増強されるに従って、その艦艇がマラッカ海峡以西の海域に行動するようになるのではないか」と警戒を示した。
これに対し、日本側は「近い将来、護衛艦隊を出すような計画もなければ、それを必要とするような事態も起こらないと思う」と答えたが、ソ連が沖縄返還に伴って生じうる軍事バランスの変化に過敏に反応していたことがうかがえる。
公電は、こうした日ソ間のやりとりを4点に分けて記しているが、大佐の名前や、4点目の協議そのものは「黒塗り」され、公開されなかった。非公開の理由について、外務省外交記録・情報公開室は「相手、相手国との信頼関係に悪影響があるかどうかを総合的に判断した」としている。
一方、42年9月19日付で在モスクワ日本大使館が外相にあてた「極秘」公電では、ソ連科学アカデミー幹部が日本の学者に対し「沖縄と同様に北方領土は日本の領土」との見解を示していたことが分かった。
ソ連共産党と密接な関係にあったアカデミーの幹部はソ連訪問中の政治学者、猪木正道京大教授に対し「国際法上、沖縄は日本に属する」と指摘。猪木氏が「同じ観点より、歯舞、色丹、国後、択捉および千島列島は日本に属するべきである」と述べると、幹部は「そうだ」と応じた。
外務省は昨年、作成後30年を経過した文書の原則自動公開制度を設け、今回が4回目。沖縄返還などに関する外交文書ファイル計606冊を東京・麻布台の外交史料館で公開した。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110218/plc11021810010005-n1.htm