【40×40 河添恵子】富士山周辺を買いあさる
いよいよ“人民大移動”のシーズンが到来する。旧正月の前後は、金満な中国人にとっての国外脱出ラッシュだ。雪景色の北海道の人気も抜群ながら、東京-富士山-京都-大阪の通称“黄金ルート”も、中国人御一行様でにぎわう。
そういった中で、中国の“遊資”によるリゾート地=富士山を望むホテルや温泉旅館などの買収&経営権獲得への動きも活発化している。山中湖畔の富士山ガーデンホテルを買収し、中国人仕様にリニューアルした北京出身の旅行会社社長は、中国メディアに「少なくとも十数棟のホテルを買収する予定。航空会社の買収も計画中」と豪語し、投資を呼びかけている。「富士山周辺ホテルの半分以上が中国資本になった」という報道もあるが、日本のリゾート地は中国人御用達へと変容していくのだろうか…。
観光業界、デパート、秋葉原などが特需=中国人の巨大な財布に期待を寄せることは否定しない。が、過度な依存と取らぬ狸(たぬき)は禁物だ。尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、中国人の宿泊予約数千人がドタキャンになった前例もあるように、政治というリスクに巻き込まれる。
また、「食事中にタンを吐いたり、声が大きいことから常連客に『もう来ないぞ!』とお叱りを受けた」「ご利用いただいた後は、床掃除やトイレ掃除を終えないと次の客を入れられません」といったボヤキも聞く。日本人がリラックスどころかストレスフルになる場が飛び地のごとく増えれば、本末転倒のような。
ちなみにネット旅行販売最大手エクスペディアによる調査で、ホテル・マネジャーの各国の観光客に対する評価「ベストツーリスト」は3年連続、日本が1位。で、2008年に最下位だった中国は、09年以降なぜかランキングから消えた。中国政府の圧力? あるいはチャイナマネー欲しさに業界がタブー視?
それにしても、水源地のみならずリゾート地もガツガツ狙われている現状を菅・泥船内閣はご存じなのだろうか?
(ノンフィクション作家)