実績が課題。
H2B2号機の打ち上げ成功で、日本の主力ロケットは、宇宙輸送のインフラとしての国際的な信頼性を確立したといえる。技術的共通点が多いH2Aと合わせると、20回の打ち上げで失敗は1度だけ(成功率95%)。三菱重工業のデータ(昨年末時点)では米国のデルタ(95.3%)に次ぐ高い成功率で、商業衛星打ち上げで世界をリードする欧州のアリアン(94.0%)を上回っている。
課題は実績の少なさだ。欧州のアリアンは約200回、米国のデルタは340回の打ち上げ実績があり、日本のH2A、H2Bは中国の「長征」(130回、成功率92.3%)にも遠く及ばない。
H2Bは需要の多い静止軌道に向けて大型衛星を2基同時に運べ、1基当たりの打ち上げ費を下げられる。宇宙航空研究開発機構は、衛星打ち上げ市場の拡大を見込み、早ければ平成24年度の4号機から打ち上げ業務を機体製造元の三菱重工に移管するつもりだ。
ただ、これまで日本が受注したのは今年秋にもH2Aで打ち上げ予定の韓国の衛星1基のみ。国内企業でさえ海外に依頼しており、信頼性やコストのアピールだけでは限界がある。
衛星打ち上げにかかわる技術者などの人員は20年前の約6割まで落ち込んでおり、国内宇宙産業の活性化のためにも市場開拓は不可欠だ。国民生活や安全保障に直結する宇宙開発の基盤を維持するためには、今後も政府のさまざまな支援が必要だろう。(小野晋史)
H2Bロケットの打ち上げ成功を喜ぶ宇宙航空研究開発機構の関係者
=22日午後、鹿児島県・種子島宇宙センター